【山本 敏行】自分がいなくてもうまくいく仕組みの作り方

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『自分がいなくてもうまくいく仕組み』著者山本 敏行さんとは?

【山本 敏行さんプロフィール】

1979年3月21日、大阪府寝屋川市生まれ。
2000年、中央大学商学部在学中に、EC studioをロサンゼルスで起業。

2004年にEC studioを法人化し、
2011年3月1日、クラウドベースのチャットツール「ChatWork」の販売を開始。
2012年、ChatWorkに社名を変更。
米国法人をシリコンバレーに設立し、拠点を海外に移す。

海外から戻りChatWorkのCEOとして活躍するも
2018年6月社長を弟の正喜氏に譲り退任。

現在は、1日CSOなどの活動を展開。

【著書】『日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方』

【ホームページ】 My CSO

【サービス1】 戦略コーチ

【サービス2】 あとよろ

【YouTube】 戦略チャンネル


小林 : こんちには、小林正弥です。ひとり社長大学のテーマとして著者対談を行っていきます。今回はChatwork創業者で現MyCSOの山本敏行さんにお話をうかがっていきます。山本さん、よろしくお願いします。

山本 : よろしくお願いします。

小林 : まず簡単に山本さんの自己紹介をしていただいてもよろしいですか。

山本 : ご紹介いただいたように、チャットワーク(Chatwork株式会社)という会社を創業してずっとやってきました。昨年(2018年)CEOを弟に譲り、今年2019年にマザーズに上場しました。現在は『My CSO』というサービスをして、いろいろな会社の経営者のみなさんに経営のコンサルティングや新規事業の作成や開発をしています。後は、ビジネスのYouTuberということで、私の経験を全部YouTubeに上げて『戦略チャンネル』をやっています。

小林 : いろんな社長さんの相談に乗っていると思いますが、どんな相談が多いですか?

山本 : ひとり社長から500名以上の会社の社長まで、いろいろな経営相談を受けています。悩みのジャンルはバラバラです。人(社員)の悩みは多いですし、売上をどうやったら上げていったらいいかというのもあります。プライベートの方でちょっと困っていることがあって仕事に支障を来たしているという相談もあります。経営者も人間ですからね。なんでも相談していただいているという感じです。

最初からチャットで仕事をしていた

小林 : 確かに山本さんみたいな方って本当にいないと思います。経営者ってやはり困難を乗り越えた人にしかなかなか相談したくないでしょう。今まで山本さんはいろいろな会社を創業されたり、アメリカのシリコンバレーにチャレンジして会社を上場するまでに育てて、いろいろなご経験をなさってきたと思います。知っている方もたくさんいると思いますが、今までどういうことを乗り越えて来たのか、スーパーダイジェスト版で教えていただいてもいいですか?

山本 : 2000年の大学生のときに、ロサンゼルスに台湾人の彼女を追いかけていって現地で起業しました。そして日本に帰ってきて、父親の会社を無理やり継がなければならなくなり、父親の会社を半分、自分の会社を半分で、一日半分しか働けないし社員を雇ってはいけないという状況でやっていました。そこで社内からSkypeやMSNメッセンジャーを使って仕事を発注していたのがチャットワーク(の創業)につながっています。

小林 : もう当時から?(チャットを使って仕事をしていたのですか)

山本 : そうです。まずひとり社長で5人ぐらいの外注を使いながら廻していって、それで自分で独立して法人化していきました。そこから社員が辞めたりして、社内の仕組みを改善していったら、社員満足度が日本一になり、テレビやCNNに取り上げていただいたりしました。さらには日本のITサービスが世界に戦っていけるものがないということで、じゃあ自分たちが作ろうということでチャットワークを作りました。

社長みずからシリコンバレーに移住して、5年間戦いながら一旦マザーズに上場させようということで日本に戻ってきました。日本の地方創生を一気にやろうということで、まちづくりをはじめたところ、盛り上がりすぎて僕のところに大量にオファーが来ました。それに疲れたこともあって、弟にCEOを譲って半年ほど静養して今ひとり社長です。

スーパーダイジェスト版でいうとそんな感じです。

一緒に新規事業を作ってビジネスをスケールさせる「一日CSO」

小林 : 山本さんの「ひとり社長」というのは、いわゆる個人の方やフリーランスみたいな方の生き方ではなく、もっとすごくスケールの大きいひとり社長だと思います。今はどんな仕組み・ビジネスモデルでやられているのですか?

山本 : そうですね、私もひとり社長という言い方をぜんぜん知らなかったのですが、結果として「ひとりの社長」ということでひとり社長という言葉を使いました。

私がやっているのは、チャットワークもそうですが、今までやってきたビジネスをスケール(拡大)する、制限のないサービスです例えば、チャットワークでしたら10万社のユーザーがいて、明日20万社になっても大丈夫。30万社になってもサーバを増強すれば大丈夫。もちろん実際はそんな単純ではないのですがスケールしますよね。社員が増えなくても売上は伸びるんです。そういうビジネスしかやったことはないし、やらないと決めています。

ひとり社長になったとき、スケールはなかなか難しいですよね。例えば、コンサルティングだったら時間を売ることになってしまうし。では、いかにひとり社長でスケールすることができるかということを考えたんですよ。考えて考えて思いついたのが、新規事業を(企業と)一緒に会社を創って、それを成功させて成功報酬をいただくことにしようということ。今、これをやっています。

いろいろな会社がありますが、新規事業というのはすごく起ち上げるのが難しいですし失敗確率も高いのです。私は「新規事業マニア」というか、大好きなんですね。なので、今までの経験もありますし、いろんな客観的なアドバイスもできるので一緒になって社長と新規事業を作っていきます。その会社のいろいろな強みがありますよね。商品とか社員とか、そういったものを客観的な視点から見ながら新規事業を作っていくのです。

それをいきなり新規事業を作って成功報酬をくださいっていうと、「いや、ちょっと」てなると思います。そういうときに私が今やっているのは、一日コンサル・一日CSOというサービスです。

それは何かといいますとCSOです。CEOとかCOOとかCTOとかCFOとかいろいろ聞くと思うのですが、日本ではまだCSOという考えがあまりありません。CSOとは「Chief Strategy Officer」、最高戦略責任者ということです。アメリカでは必ずそこは分かれています。

僕が一日だけの最高戦略責任者。一日だけ最高戦略責任者になって御社を見て、徹底的にコンサルする。そして、一日40万円というコンサル費用をいただくと。ただ、「今までやってきた18年間の経験からすると40万円は安すぎるよ」と言われるんですが、敷居を高く上げ過ぎると発注できる会社が少なくなるので、40万円でやりますと言っています。

そうすると、朝10時から夜5時までその会社に行きながら、経営者や社員にヒアリングを徹底的にしながら、数字を見せていただく。会社の人間ドックですよね。全部を見せていただきながら、その会社が解決して欲しい問題以上に、実はここが一番まずいという問題があれば、その場で外科手術をすることもあります。

鏡を使わないと自分たちの魅力は気付かない

山本 : 「こういう形で解決してくださいね」という中長期の戦略を与えることを、一日CSOでやっています。そうすると、人間ドックを徹底的にやっているので、その会社の隅々まで分かるんです。大体どこの会社も売上を上げたいし、新規事業を起ち上げたいけれど、なかなか起ち上げられないという悩みは共通してどこにでもあります。そんなときに「この商品をもっとこう作って一緒に売りたいんです」という提案をするんですね。

小林 : そういうのがムクムクと

山本 : 出てくるんですよ

小林 : 新規事業マニアの・・

山本 : 自分たちの商品を毎日当たり前のように扱っていると、自分たちの魅力って気付かないんですね。自分の顔を見るには鏡を使わなければ見れないのに。自社の良さって実は社外の人の方がよく見えるし、僕はそういった視点で見ていますから。さらにこれはどんなに大きくなり、スケールするかもしっかり見ています。

見た上で、「この商品をもうちょっとこういう風に切り替えて、こう展開したら新しい事業としてすごく伸びると思うので、そこの売上の10%から20%を成功報酬でいただけるなら新規事業をやりませんか?」と言うと、「山本さんと一緒にやれるんだったら」と乗ってきていただけるんですね。一日コンサルの40万円(の期間)は終わりましたけれど、そこからは継続的に新規事業の方の打ち合わせに入っていくのです。

それで売上を作っていくのですが、それも無料でコンサルしながら新規事業を作っていって、マーケティングするときの費用は全部折半で出しますと言います。先出しですね。広告費用やホームページを作ることや展示会に出す費用は折半で、僕も本当にこの新規事業にリスクを負ってコミットしていますよということを見ていただきながらやっています。

「女子アナウンサー×広報=女子アナ広報室」で初月から過去最高の売上達成

小林 : 山本さんは、「この事業をもっとこうしたらうまくいく」とか「この新規事業はいける」という(判断)は、もちろんさまざまな要素があると思うのですが、どういうところに着目されていらっしゃるのですか?

山本 : その商品を見たときに市場の話を聞いていますし、競合のサービスについても聞いていますので、このサービスのこの強みをこういう風な切り口でこうすればこの市場を一気に取れるなというのが分かります。

また、ぜんぜん業界の人たちが気付いていないような、「この市場に打ち出すことができるな」みたいなことをやったりします。

例えば、私が最初に出した新規事業としては、とある女子アナウンサーを束ねている会社です。女子アナウンサーがフリーアナウンサーになって結婚式の司会や話し方講座をされている会社がありました。

でも、司会とか話し方講座って単発の売りきりの仕事じゃないですか。「どうやって売上を伸ばして行ったらいいのですか?」と聞かれても、僕も司会や話し方講座で売上を伸ばすのはなかなか難しいなと思っていました。そんなとき、「アナウンサーってどういう人たちなんですか?」と、あまり知らなかったので聞いてみました。

「アナウンサーって原稿を読むのが仕事ではないんです。原稿の前にプレスリリースをチェックし、デスクに出してOKが出たら企業にアポを取って取材に行ってインタビューをして、その企業をテレビに取り上げられるよう魅力的な原稿を書いた上で読むんです。原稿を読むところは一部なんです」という話をされました。「そんな仕事をして、実は女子アナウンサーはスーパーハードワークなんですよ」という話を聞いて、普通に見ていたら華やかだと思っていたのですが、ぜんぜん違っていました。それって広報の仕事にすごく近いんですよ。

小林 : 確かに。

山本 : それ、めちゃくちゃ面白い。広報って今すごく困っているんです。広報の何が難しいかというと、会社の内容としての容姿・コミュニケーション能力・文章・客観的な視点・記者とのリレーションが必要です。しかも社内にひとりしか必要ない。そうすると、(各企業から)奪い合いになります。それでその人が辞めたらその人の記者のネットワークがなくなるのでメディアに出られなくなるみたいな話になるんです。

女子アナってテレビ局に入っていけるじゃないですか。一緒に働いていた元々の先輩もいますし。しかもめちゃくちゃそういうこともやってきた。テレビ側視点から見て企業(の良さ)を引き出すわけです。「これいける!」女子広報の仕事をやらしてくれ!と言ったんです。サービスの名前も「女子アナ広報室」。

過去5年やって5期目の会社だったのですが、女子アナ広報室を始めてから1か月で過去最高月収を達成したんですよ。年間契約なのでもちろんそこから上がっているんですよ。

「戦略コーチ」の本当の意味

山本 : 同じ人材、同じスキルにもかかわらず、僕から客観的な視点で見て、「こういう切り口でここにぶつけていったら跳ねますよ」と言っています。そして実際に跳ねるじゃないですか。女子アナウンサーの会社なので、マネジメントや財務やバックオフィス的なところが弱かったりするので、僕はマーケティングで支援し、足りないところについては全部専門家の知り合いがいるので「支援してくれ!」と依頼して充てることができるんです。

そうすると売上がグングン伸びていく。伸びていけば伸びていくほど売上の10~20%が入ってくるのでストック収益(継続的な収益)になりますよね。そういう形で一人社長なんだけどストック収益を作り、それをどんどん積み上げていきます。

そのために一日のCSOの40万円のコンサルに加えて最近始めたのが、「戦略コーチ」という一か月10万円で僕になんでも相談できるコーチングのサービスです。「山本さんにコーチングを受けるのに毎月10万円で安すぎますよね」と言ってくれる人もいるのですけど、いいんですよ。僕がその業界のことを知りみなさんの経営の悩みを解決しながら、勉強させてもらっているからです。かつそこで新規事業を作っていくネタにもなるんです。

一日CSOの40万円は単発ですけど、戦略コーチは何社も貯まっていけば毎月ストック(収入)が貯まっていきます。戦略コーチがベースの売上。その上に新規事業。さらにもうひとつやっているのがスタートアップ企業へのエンジェル投資ですね。

(チャットワークは)上場まで持っていきました。500億円以上の企業を上場した社長はなかなかいません。そのノウハウと経験を持っているので、スタートアップの若手の20代の起業家から「支援してください」と来るので、エンジェル投資も少しやっています。(リターンが)返ってくるのは5年以上先に上場やバイアウトしたときしかないので、それは種植えですよね。

ベース(戦略コーチの売上)、新規事業、将来的なドカンとイグジット(投資回収)したときのリターンが返ってくるという3本柱でやっています。

新規事業を起ち上げてうまくいく人といかない人

小林 : 新規事業を起ち上げて、うまくいく人とうまくいかない人というのは、どういう違いがありますか?

山本 : 新規事業は基本的にほとんどが失敗するんですよね。その失敗するときというのは、始める前に甘い見積もりでスタートして、とりあえずやってみようとする。後は、やり始めてからのやり方の問題であったりとか、マーケティングの問題とかです。起業と一緒です。

起業してうまくいく人といかない人は一緒だと思うのですが、ひとつの既存事業がある中で新規事業をやろうとすると、どうしても既存事業に引っ張られがちになるんです。そういうときに僕が入っていくと「どうなってますか?」といつもチェックが入るので、新規事業を自社だけでやっていると止まってしまったりするのですけど、それを僕は止めずに伸ばす感じになります。

小林 : 最初の新規事業の起ち上げのところからCSOとして戦略をきっちり詰めて、起ち上ってからもお尻を叩いて、と。

山本 : そうです。共同マーケティングで「次これやりましょう、あれやりましょう。僕も(お金を)半分出しますから」みたいな感じでやっています。

日本のためになることにも取り組んでいく

小林 : 一日や一週間で、山本さんはどんな感じで活動されているのですか?エンジェル投資、戦略コーチ、CSOと、いろんなことをやられているじゃないですか。

山本 : 前のチャットワークのCEO時代は、土日も含めて30分単位でミーティングが朝から晩まで入っていました。一時間のミーティングを入れようと思ったら1か月半先になってしまう。そんな状態でした。

放っておくとまたそういう働き方をしてしまう。人間ってパターンで(動いてしまう)。例えば、転職してまた同じような理由で転職したりするケースが多いと思います。

また同じパターンに入ってしまうと思ったので、時間の使い方を徹底的に研究して人と会うとかミーティングは午後だけにしました。しかも新しい人と会う場合は、金曜日の午後から入れて、木曜日の午後に入れる。それ以上入らない場合は、翌週に回します。

とにかく月火水は考える時間にする。そして戦略コーチや一日CSOに使っています。

小林 : 山本さんは頭脳が資本だと思うのですが、脳を最大限のパフォーマンスを上げる秘訣はありますか?

山本 : 放っておいても考えてしまうんですよね。考える時間はミーティングが続くと減ってしまうので、その時間を確保することが大事です。放っておいても考えるタイプなので、その時間をしっかり確保することが今回取り組んでいるところです。それさえあれば勝手に考えるので。

小林 : 今まではひとつの大きな500億円という会社の社長をやってきた。そこからいろいろな社長さんの相談だったり、一緒に事業を作られているということで「社長の社長」といったら違うかもしれませんが、縦横無尽にいろいろな新規事業をどんどん展開できるような自由さの中で新しい事業の立ち上げられているということですね。

山本 : そうですね。いろいろな事業を立ち上げながら、まちづくりもまた取り組んでいくと思いますし、いろいろなNPO団体の支援とか、そういった自分の収益につながらないけれども日本のためになるようなことも、これから取り組んでいこうかなと思っています。後、大企業も新規事業を作るのが苦手だったりするので、大企業からも結構問い合わせが来ていて、そういう大企業を動かしてみたいです。日本を動かしているのは大企業だから。

ただ、イノベーションの部分において日本の大企業はうまくいっていないので、シリコンバレーのノウハウを持っている僕が入っていくということもしたいです。将来的に究極の目標は「総理大臣のCSO」になりたいと思っています。総理大臣にはなりたくない。総理大臣のCSOになりたいんです。(総理大臣に)「こうしなはれ」と言うのです。

これからどうすれば日本は元気になれるのか

小林 : シリコンバレーでビジネスの真剣勝負をされて、そして今日本の現状を見られている中で、山本さんが考えるこれからの日本のビジネスのビジョンについて。どうなっていったらもっと日本は元気になれると思いますか?

山本 : 日本ってビジネスがガラパゴスなんですよね。だからグローバルな視点を持った上でビジネスをスタートしないと、どうしても日本国内がターゲットになってしまう。日本人の総人口は減っているじゃないですか。そこの視点を切り替えないといけないところです。

後は企業が後継者不足で減っていきます。人口も減っていく。減っていくので奪い合いになってすごくしんどいのですが、やっぱり新しいものを生み出していかないとダメ。新規事業でどんどん新しいものを生み出していって、そうではないところはシュリンク(縮小)していくところをブチ破る後押しができたらいいなと思っています。

小林 : そういう中で、僕たちはひとり社長として身軽でいろいろな人と上下関係なく並列にチームを組むという形でビジネスをやっています。ひとり社長の稼ぎ方とか働き方について、もう少し詳しく教えていただけませんか?

山本 : 私も結果的にひとり社長になったというだけで、ひとり社長についてはみなさんの方が先輩ですね。僕が「ひとり社長はこうしたらいいんじゃないですか?」というのはあまりないのですが、どちらかというと、私もひとり社長ですが、過去のやってきたこと・得意なことみたいな、自分の強みを客観的な視点で見る。そして自分がやりたいことややれることに取り組んでいって、人の真似ではなく自分しかできないところを磨いていかれるといいのかなと思います。

小林 : 最近はひとり社長の方からどんな相談がありましたか?

山本 : ひとり社長さんからの相談は、僕はあまりないですね。逆に社員がどうなっているとか。僕に相談するということは、僕に近しい・僕を目指しているような方々が相談に来るのでひとり社長さんからの相談はあまりありません。

他にはない商品・サービスを作っていくコツ「徹底的にパクれ」

小林 : では、逆に僕の方からいいですか?

山本 : はい。

小林 : まず商品開発。商品を作らないと売上が立たないと思うのですが、他にはない商品・サービスを作っていく視点とかコツとかがありましたら教えてください。

山本 : 僕は(お客さんの)会社に行ったときに、いろいろなものを見てきたこともあり、ピン!と思いついてしまうんです。それって直感みたいなところがあって、手法で思いつくというか、普通にMBAみたいなところでいろいろな分析の手法がありますが、じゃあMBAを取った人が必ず成功できるかといえば、成功できなかったりするので、手法で思いつくものではないのではないかな?と思います。やはり自分の過去の経験や得意なところから編み出していくのがいいのかなと思います。

小林 : では、もう少し踏み込んだ現実的な質問なのですが、ライバルに対してどういう風な心構えだったり、取り組みをしていけばいいのか。例えば、小さい会社で勝負していた時に、明らかに商品・サービスがかぶっていたり、競合他社がいるという中で、そこでもビジネスとして勝ち上がっていくというか、選ばれていくにはどのようにしていったらいいのでしょうか?

山本 : 若い起業家にいつもアドバイスしているのですが、若い起業家って何もないじゃないですか。ビジネスの経験もないし、お金もないし、知識もないし、横のつながりもない。でも、そんな彼らがどうやって勝ち上がっていくかといえば、「君らはなにもない。TTPだ。『徹底的にパクれ』と」言います。普通にパクれというと印象は悪いのですが、「何もないんだから、うまく行っている人の良いところをまず真似させていただけ」ということ。「学ぶ」は「真似る」から来ているんだと。みなさんも小さい頃から日本語を自分で発明して、漢字を発明したのでしょうか?違いますよね?親の真似をして真似をして、だんだん自分のオリジナリティにした。守破離ですね。守る・破る・離れるみたいな。そういうことが必要です。

まず競合がいるのであればありがたいですね。その市場があるということですから。ブルーオーシャンというのは一か八かです。ほとんどの場合は、市場がないのがブルーオーシャンですから。競合がいるということはマーケットがあるということです。そこを獲ればいい。メルカリはヤフオクの市場を獲ったわけです。

なので、競合がいるということは、嫌だなと思うのではなくて、市場を一緒に育てていきながらそのパイを取る。「取る」というといやらしく聞こえるかもしれませんが、生き残りのためには必要なことです。

最初に思いっきり走る「マラソン理論」

山本 : そういうことをしつつ、後は「マラソン理論」というのがすごく好きです。自分の独自の理論なので、検索しても私のブログぐらいしか出てこないと思います。

小学校の時に、校庭を10週走りなさいみたいなマラソンがあるじゃないですか。そういうときに僕はどうやって競合に勝つかというと、最初から思いっきり心臓が破けるくらいまでダッシュするんです。僕のやり方ですよ。本当のマラソンの時はそんなことはしません。ビジネスの場合は圧倒的にダッシュするんです。そして、2位までを一周差にして、後は2位と一緒に走るんです。そしたら一緒に走っているんですけど、(こちらが)一周早いんです。絶対追いつけないです。

そこからがんばって一周追い着こうとしても、だんだんみんな疲れていくときに追い着くのはまず無理なんです。なので、最初に走り切るということがすごく大切です。ビジネスで成功したいわけですから、がむしゃらに働きまくる。「働き方改革クソ食らえ」ぐらいの気持ちで思いっきり働く。ひとり社長でも、社長って働き方改革は関係ないです。稼ぎたいのなら思いっきり最初は走る。後は仕組み化して収益化して自由な感じにしていけばいいんです。最初は走るのがすごく大切だと思います。

小林 : 周回遅れさせるというのは、どういう状態になったら相手より一周早く回ったということになるのですか?

山本 : (ビジネスは)トラックではないので、どこまで行ったら一周したというのは難しいところではあるのですが、今までの競合が気にならなくなったというところまで行ったら周回遅れにしたと思います。「あいつらがこんなことをやってきている」「あんなことやっている」みたいな。施策数では絶対負けないし、マーケティングでも、彼らが10個やってきたところをこちらでは20個やったとか。ありとあらゆることをチューニングしてやったとか。そういうことをやっていく。

僕たちも競合がマイクロソフト・Google・slack・LINEなので、ひとり社長同士だったらリソースは限られていて人的リソースやお金が同じぐらいだったらいいと思います。思いっきり借り入れしてガーンとやってもいい。

僕たちが戦ったきた競合は何十兆円企業なのに、うちは何十億円しか調達できないない。そういう状況で戦っていくにはどうすればいいかというと、正面衝突では絶対勝てないですよね。象とありんこみたいな感じですから。(正面から行ったら)潰されます。

そうではなくて回り込んで象の足に絡みついて腐らせて動かすみたいなことをやらないと、競合の中で勝ち上がっていくことは難しいんですよね。ひとり社長の戦い方とはちょっと違うかもしれませんが。

小林 : でも、考え方としては(同じ)

山本 : 考え方として、そういう(状況の)中で自分たちができることをやるのがいいかなと思います。

必ず昨日の自分に勝つ仕組みを作る

小林 : 例えば、バーッて最初から超爆速で走って、どんなに小さな市場だったとしても1位になったら今度は追われる立場になるわけです。追っているときは相手の真似をして、違いを作って抜いていくというのは分かりやすいと思いますが、自分が先頭になった場合、次はどういうところを考えて行けばよいでしょうか?

山本 : ボクサーもチャンピオンになってからの方が維持するのが難しいのと同じですよね。自分たちが先頭になったら「あれ?(周りに)見本がいない・・・」みたいな感じになるわけです。そういうとき、私たちの場合は海外の競合を常に見ています(海外の企業は動きが)すごく早いわけです。同じジャンルになったとしても違うジャンルになったとしても凄い考え方をウォッチして「こんなスピードじゃだめだ」と分かる。僕自身もシリコンバレーに行っていたので、シリコンバレーのスピードが当たり前になったりするんですよね。

なので、自分がトップになったとしても同じジャンルの同じライバルだけを見ていたらダメなんです。YouTubeでも言っているんですけど、ライバルをライバル視してはいけないのです。ライバルは落ちていくかもしれません。その落ちていく人たちを見ても仕方がないじゃないですか。

格闘技をやっていたので分かるのですが、昨日の自分よりも今日の自分の方が強くなっていたら、強くなり続けるわけじゃないですか。さらにすごい強い奴がいたらそいつに勝つにはどうしたら良いか(考える)。そういう感じで、必ず昨日の自分に勝つ。だから昨日より何か必ず成長している状態。ブログをひとつ書くのか、インスタに投稿するのか。それのスピードを上げるような仕組み(を作る)。全部自分だけでやっていたら限界が来ると思うので、自分を楽にさせながらできるようにする。

最初はお金もないのでマラソンのように思いっきり走ります。お金が増えてきたら、売上的にもマーケティング的にもサービス的にも自分も楽しながら成長の速度を2字曲線で成長させないといけない。Y=X²のような。Xが1は1、2は4、3は9みたいな。そうなるためにはどうしたら良いかと常にひとり社長として考えていくのがいいと思います

業務整理コンサルと事務局サービス「あとよろ」

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小林 : ひとり社長って資源が限られていると思います。いきなり優秀な人が仕事を任せられる人もなかなか見つからないこともあります。そういう中で、今度山本さんが新しいサービスを作っているということだったのですが、それについて教えてください

山本 : アドバイスさせていただいていた会社なのですが、「そのサービス、切り口を変えたら今の時流にはめちゃくちゃ当てはまるし、僕がマーケティングしたらめちゃくちゃ売れると思う」というサービスだったのですが、みなさんもひとり社長なのでリソースが限られている。お金的にも時間的にも限られているとなったときに考えられるのは、クラウドソーシングとか秘書代行とか、今だったらRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)といったものがあると思います。

一番盲点なのが、さっきの新規事業の話でもそうでしたが、自分のことって自分では分からなかったりします。なので、クラウドソーシングを使おうかなとか外注しようかなと思ったときに、実はもっと外注できたり任せた方がうまくいくことが結構あります。そういうときにやらなければならないことは、外部化の視点で業務を整理することがすごく大切です。

私も引っ越しするときに、今まで自分でがんばって部屋の整理整頓をしていたのですが、こんまりさんが有名ですが、整理収納サービスで一日3万円ぐらいで来てもらうと、サーッて綺麗になるんです。自分ではありえないくらい同じクローゼットの収納で同じ物の量なのにぜんぜん変わるんですね。でも、自分でやったらそうはならない。

それって業務も同じで、プロが見た上で「業務をこうしたらいいんじゃないですか?」っていうコンサルをやるサービスをひとつ考えています。そのときに業務整理コンサルをして、「みなさんのひとり社長の業務を全部分析して外注に出せますね」みたいなコンサルをやります。それだけでなく、そこから外注を請けるようなサービスも一緒にセットにします。

難しいのは、クラウドソーシングに発注したときに、フリーランスを探して任せてみてクオリティをチェックしてダメだったらまた違う人を探す、みたいなこと。また複数人のフリーランスをまとめていくと、管理するという作業が発生したり、支払いもあったり、後は優秀な人に発注していたら辞められたときにまた大変なんですよね。依存してしまっていたからです。

それもちょっと良くないなということで、業務をコンサルした上で次に事務局みたいなものを作って、そこで複数の人がみなさんのようなひとり社長の右腕のように全部丸投げする感じにする。そこから外注に出して、(上がってきたものについての)クオリティチェックをそこの事務局がしてお返しするみたいな。経営されていて右腕がいらっしゃっていたら分かるのですが、本当に優秀な右腕がいるとめちゃくちゃ楽なんです。やりたいことや言いたいことをバーンと言って「よろしく!」と言えるんですね。で、今回作ったサービスの名前が「あとよろ」です

小林 : あとよろ?

山本 : 「後はよろしく!」

小林 : 気持ちいいですね(笑)

山本 : 全部よろしく、と。その上で、定期的に自分の業務のコンサルをしてくれ、ということをやっていこうと思っています。コンサル費用は元々は10万円したのですが、それを無料にしましょうということで、無料で展開していって、事務局があって外注をするというサービスをします。私は働き方改革をずっとチャットワークでやっていましたし、これから働き方改革協会というのができるのですが、そこの理事にもなります。ひとり社長はもちろんですが、日本の企業の働き方改革を全体的に後押しするサービスをさらにブラッシュアップして「あとよろ」として提供していこうかなと思っています。

小林 : すごいですね!確かに社長ってワーッて売上を作っていくけど、その過程で部屋が散らかるようにいろんなものが散らかる。それを整理収納サービスみたいに、業務を整理してしかもそれを社長が後はよろしくと丸投げできるように事務局から何から全部やっていただけると。

山本 : そうです。

小林 : これはリリースされているのですか?

山本 : そうですね、10月17日リリースです。この動画がアップされたときには(リリースされています)

小林 : そのサービスのホームページのURLはこの動画の下のリンクから見られるようになっています。最後に、今後の山本さんのビジョンといいますか、これからの展望について最後まとめで教えていただけますか?

山本 : 先ほども言いましたが、コーチングしながら、新規事業を作りながら、エンジェル投資をやりながらNPOの支援、そして最終的には総理大臣のCSOみたいな、とにかくいろんな組織・いろんな課題に入っていって、問題を解決しまくっていくというのが私のやっていきたい将来のビジョンですね。

小林 : 本当、最終的には総理大臣のCSOになって税収を取れるような日本のビジネスを盛り上げていただきたいなと思います。本当に今日はありがとうございました。

山本 : ありがとうございました。

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