【稲垣 陽子】言いづらいことをサラリと伝える技術

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『言いづらいことをサラリと伝える技術』著者稲垣陽子さんとは?

【稲垣 陽子さんプロフィール】

株式会社コーチング・システムズ 代表取締役

1970年生まれ、東京都出身。青山学院大学で心理学を専攻。卒業後、プライスウォーターハウスにて中国進出を目指す日系企業のコンサルティングを行う。
帰国後、日本でコーチング普及の先駆けとなった株式会社コーチ・トゥエンティワン(現:コーチ・エィ)に入社。大手企業をはじめ企業の導入実績を上げる。
独立後、社長専門コーチとして社長の想いを現実に変えるコーチングを実施。企業の社長のほか、中間管理職やリーダー層、一般社員にもコーチングの対象を広げ、チーム内のコミュニケーション改善と組織の活性化を目指して活動。自分も相手も活かす共創コーチングを創設。
2014年に設立した共創コーチングスクールは最高峰の国際基準を満たした日本で4社目のコーチングスクールとしてICFから認定されている。

【著書】『言いづらいことをサラリと伝える技術』

【公式HP】共創コーチング公式ホームページ


『コーチングアドバイザー』稲垣友仁さんとは?

【稲垣 友仁さんプロフィール】

株式会社コーチング・システムズ 取締役

1969年生まれ、三重県出身。金沢大学教育学部卒業後、三重県公立中学校教諭、小学校教諭を経て、三重県教育委員会へ出向。その後、14年間勤めた公務員を退職し、教職公務員からプロコーチへの転職第1号となる。
日本にコーチングが導入されたコーチング元年(97年)からコーチングを導入し、問題児の個性を活かして才能を開花させる奇跡のコーチング手法で、これまでに500人以上の子ども・親に対してコーチングを行なってきた。現在では、各都道府県教育委員会・行政機関・各教育現場に対してコーチングの講演・導入アドバイザーとしても活動中。講演・プロデュース数は年に100本を越え、10,000人以上の教育者・学生達に対してコーチングを伝えている。
2007年・2008年三重県教育委員会「教育コーチング推進アドバイザー」
国立宇都宮大学大学院工学研究科「共創コーチングアドバイザー」
著書に、「3年目の壁の乗り越え方」Amazon Kindle版がある。


小林 : こんにちは、教育スクールビジネス研究所の小林正弥です。今回は、著者専門家対談ということで、『言いづらいこと サラリと伝える技術』という本を出されて、メインはコーチングの事業を展開されている稲垣陽子さんと、稲垣友仁さんにお話を伺っていきます。よろしくお願いします。

稲垣(陽) 稲垣(友):よろしくお願いします。

企業や団体、個人の方に向けてのコーチングプログラム

小林 : 今日のテーマは、僕のビジネスのコミュニティーの中で一番重要で、自分たちの事業の鍵になっている、どうやれば目の前の人の結果を出せるのかということについて、お聞きしたいと思います。

どうやれば、目の前の人や、自分の部下や関係者に結果を出してもらえるか、これを見ていらっしゃる方、日々悩んでいると思います。だけどどうやればいいのか、全然分からないという現状だと思いますが、それに関して、明確な答えだったり、サービスを展開して、個人や企業の方が学びに来られているということで、お2人にお話を伺っていきたいと思います。まず簡単に、どんな活動をされているのか、教えてください。

稲垣(陽) : コーチング全般の仕事をさせていただいてます。大きく分けると、まず一つは、企業や団体に向けてコーチングを教える研修をしたり、最近は研修だけではなく、コーチを受けたいというニーズもすごく増えてきているので、企業さんにある程度時間をかけてコーチングを受けてもらう、コーチさせていただくというプログラムを提供しています。最終的にリーダーが、いかに人をうまく育てていけるか、リーダーそのものがいかに自分を主体的にうまく回していくのかをサポートしていきます。

もう一つは、私たち、共創コーチングと呼んでいますが、それを体系化したものを、個人の方にスクールという形で提供しています。

共創コーチングとは

小林 : 共創コーチというのは、どういうもので、どういう意味でそのネーミングにされましたか。

稲垣(友) : 共に創るコーチングということです。僕自身は昔、小中の教員をやっていましたが、独立をしてコーチになりました。宇都宮大学というところで、「コーチングを教えてください」ということで、12年ぐらい前にやりましたが、そこの先生方と話をしていて、コーチングの何に関して学生たちに教えるかというときに、学生たちが現場に出たときに、最終的には人との関係が大事になってきます。

人と掛け算で新しいものを創り出す。当時、ものづくりの中では共創ということがすごく言われていて、共創を目指したコーチングをやりましょうという話になって、宇都宮大学の先生方と開発したのが、この共創コーチングです。

僕自身教員でしたが、教員の中にはすごい人がたくさんいます。目の前の生徒の成果も出すし、さらに卒業した後も、その子たちがいるとモチベーションの高い集団になってくる。僕もそういう先生になりたくて、研究していたら、コーチングのスキルをところどころで使っているということに気付きました。

あと、企業の経営者を見たときに、相手をうまく生かしている社長というのは、コーチングスキルを使っていました。自分ではなく、他の人たちをうまく生かして、自分の力だけではなく、相手の力と掛け算で、すごいものを生み出していく、そこで使っているコーチングをスクールにしようということで、それから共創というものを付けました。

教育者や企業のリーダーが学ぶコーチング

小林 : 今、どういう人が学びに来ていますか。

稲垣(陽) : 学校の先生も多くて、校長先生や、教育委員会の指導課長みたいな人もいたり、教育関係者も多いですし、企業のトップの方、社長やリーダー、あとお母さんなども来ています。

小林 : コーチングという言葉が一般化されて10年ぐらいたちますが、みんなどうやって人を育てるのかということで悩んでいると思います。今、学びに来られている方は、どういう悩みや課題を持たれていますか。

稲垣(友) : 自分が思ったとおりに相手が動いてくれないということ。「こう言ってるのに、やらないんですよ」と。僕らからすると、「言い方悪いんじゃないですか」。僕も教員をやっているときに、よく「あなたのやり方が悪いんじゃない?」と言われました。まさにその部分をどうしたらいいのかということを研究してきて、それを教えています。

稲垣(陽) : あからさまに「それは、やりたくない」と言ってくる部下は少なくて、みんな返事はいいんです。「はい、やります」「分かりました」「頑張ります」と言うけど、やらないということに対して、どう関わればいいのかという悩みが多いです。

小林 : 現実的に一番困りますよね。「やります」と言って、1カ月、2カ月たっても、思うような結果が出なかったり、本人も罪悪感を持っていたり。そこを変えていかないと、企業の業績も伸びていかないし、人も定着しない。時間もお金もかけて、それを学びに来るということは、それだけ強い課題意識ということですよね。それは増えている感じですか。

稲垣(友) : その人の中に教育者みたいなものがある人は、「人をうまく生かしたい」と思うようです。

稲垣(陽) : 「人なんかどうでもいい」と思っている人は、実はあまり来ません。「今まで俺は一人でなんでもできた」という人も来ます。一人でやることに限界を感じて、いろいろな人を巻き込んでやらないといけないけど、いざ巻き込もうと思うと、どうやればいいか分からない。自分のやり方を言ったら怖がられるし、教えても教えたとおりにやらない。本来人のために何かしたい、育てたいという人と、あとは切羽詰まって、自分一人はうまくいくけど、周りをどう動かせばいいか分からないという人と、二つのパターンです。

稲垣(友) : 昔はコーチングというキーワードが、ビッグなワードではなかったけど、より近づいてきた感はあります。

バージョンアップしたコーチング

小林 : お2人の共創コーチングは、コーチング2.0、もしくは3.0ぐらいの感じで、今までのコーチングをアップデートしている感じがしますが、コーチングの変遷みたいなところを教えてください。

稲垣(陽) : いかに人を自発的にさせるかのために、コーチングが活用されていて、上司が動かない部下にどうやって関わればいいのかというのでやっていたのが、1990年代後半から2000年に入った頃だと思います。

皆さん、コーチングというと、いい人になるイメージなんですよ。自分のことを言ってはいけなくて、「正弥くんは、どう思うの?」「どうしたいの?」みたいに引き出すイメージがあるんですね。引き出されてうまくいく人は、うまくいきますが、本当に相手にうまくいかせたいと思うと、自分の力を使うというのが、私たちが考える共創です。引き出すのではなく、こっちの力も使おうね。掛け算で、2人の間で新しいものを生み出す。

稲垣(友) : 気付きが触発されるイメージです。

稲垣(陽) : どれだけ2人の中で気付きが生まれるかという対話、コミュニケーションをつくっていこうというのが、私たちが今やってるバージョンアップしたコーチングかと思います。

コーチングの真髄を突く「1on1ミーティング」

稲垣(友) : アメリカでのコーチングは、Co-creativeに行おうというのがあります。コーチが引っ張るのではなくて、クライアントと掛け算になっていくように進めましょうといいますが、日本はどうしても上下関係があるので、コーチ側が何かあげなきゃいけないみたいな、コーチングがコンサルティングになってる。

1997年から2003年頃、企業でコーチングの研修が流行りました。そのとき、「上司はコーチにはなれない」ということに気付きました。引っ張るだけで人間は動くわけではないので、コーチングをやるのには、人間力がものすごく要る。一度、研修が沈静化されたんですが、その次に、社長にコーチをつけるというのが来て、最近本質に近づいてきたのが、Yahooさんが出した“1on1ミーティング”、あれが結構コーチングの真髄を突いていると思います。

小林 : 1on1ミーティングとはどういうものですか。

稲垣(友) : 1週間に1回、30分、部下とミーティングを持って、部下の話を聞いていく。コルブさんの経験学習のサイクル。僕たちは、経験や体験から学ぶものが、すごく多い。まず経験をします。次に、成長している人と、成長していない人がいるとすると、成長している人は、経験をした後に内省をしている。何がよかった、何が悪かったという振り返り。「あのとき、ああすればよかったな」という教訓化をする。

これがサイクルとして、経験、内省、教訓化、そしてまた新しいものにトライしていく。こういうサイクルを回していくことを、経験学習のサイクルといいます。成長している人は、勝手に自分でこういうことをやっていたということに気付いたわけです。

上司は部下に成長してもらえば、結局売り上げも上がる。下手なマネジメントするよりも、部下に成長してもらうほうがいい。僕たちが、内省から教訓、振り返りの付き合いをしてあげることに価値があるのではないかということで、1on1ミーティングをしようという流れが、今すごく来ています。ただ、本人の気付きが結構なパワーになります。

成長できる経験学習のサイクル

小林 : 経験学習のサイクルが回っている人は、結果が出せている人だったり、成長できている人だと思いますが、何か具体的な事例はありますか。

稲垣(陽) : 正弥さんは、まさにその事例をいってますよね。多くの人は経験すると、「どうせ俺なんて」とか誰かのせいにしたり、「とりあえず飲んで終わろう」と言うじゃないですか。そうではなくて、痛い思いをしたいろんな経験を、どうしようかと考える。

稲垣(友) : 僕たちコーチは、そこで愚痴を言ってる人に、「じゃあ、どうしたらよかったんでしょうね」と問い掛ける。そうすると、考え始める。

小林 : 例えば僕の場合、最安値の日雇いのバイトまで落ちたときがありましたが、そこから自分で「月収を100万円にしたい」という目標があって、でもこの仕事では100万円稼げないというのがありました。そもそも100万円稼いでいる人に聞かないと、答えは分からないよなと思って、教えてもらって、その中で仕事の契約の仕方も、自分の話をしすぎたら相手が引いて契約にならなくて、次は8割話してたのを、8割聞いてみようとしたら、相手がいっぱい話してくれて、相手の要望も分かって、「それを解決できるんです」ということで契約につながったり、こういう感じです。

稲垣(陽) : 素晴らしい。優秀な人はそれが勝手にできる。でも普通の人は、なかなかそこまでできないというのがあるので、そこをコーチなり、上司が、振り返りをサポートしていくというのが、1on1の考え方。

稲垣(友) : 基本、人間は誰しも目標があればそれをやります。でも仕事になるとプレスがかかる。特に若手は仕事がなかなかできないから、そのプレスにやられてしまって、学生のときはやれた子が、やれなくなったり。

小林 : プレスって、何でしょうか。

稲垣(友) : 仕事のプレッシャー。ミスしちゃいけないとか、どうしたらいいか分からないとか。そういうときに、ちょっとサポートをして、できてる部分は「できてるね」。できてないところは「どうしたらいいと思う?」と問い掛けて、落ち着いて考えたらできたりする。それを支援するのが、内省からの教訓化。

小林 : 僕も信頼できる人に、1on1のミーティングをしてもらっていたので、もし自分が最初から経験学習のサイクルを回せていたら、最安値の仕事になっていなかったと思います。そこからサイクルが回って学習できたのは、1on1のミーティングがあったからで、それがなかったらできていませんでした。ビジネスパーソンだったら誰だって結果を出したいと思っていますが、それでも成長していけない人と、していける人、どういう違いがありますか。

稲垣(友) : 正弥くんが一回回ったでしょ、結果が出たら自信を持ちますよね。

小林 : そうですね、いけるという自信を持てました。

稲垣(友) : 多くの人は、いけないと落ち込んだり、諦めていく。その支援者も必要です。放っておくと、「もういいや」となっていく。できる人はできるけど、できない人はできない。組織の中で、結果が出る人と出ない人が2:8と言われますよね。

稲垣(陽) :同じ失敗をしたとしても、そこまで行ける人と行けない人がいますよね。その失敗から何を気付くかということ。自分の気付き力が問われていて、正弥さんはすごく気付き力があったと思うので、内省、振り返りから教訓に行けたと思います。今、マインドフルネスが流行ってますが、あれもちょっと立ち止まって、自分を気付くということですよね。

稲垣(友) : もう一つ、正弥さんは目標に対してロックしたはずなんです。「いくぞ」と。それも大きいと思います。悩むということは、目標があるはずなので、実は悩んでほしい。ほとんどの人は、悩んではいるんだけど、逃げてるみたいなところが多い。正弥さんは目標に対して、「どうやれば行けるだろう」というエネルギーがあって、そのエネルギーをすごく感じるので、目標を行きたいものにすることもすごく大事です。

小林 : その人が成長して結果を出していくというところで、1on1のミーティングや、そのベースに経験学習というものがあると。その意味で、コーチングがより現実的に成果を出せる形になってきて、それでいろいろな企業や個人さんが、お2人の会社に学びに来られているということですね。

稲垣(陽) : 素晴らしいまとめです。

稲垣(友) : 今までは、引っ張りをしていたけれども、より相手にフォーカスをし始めてきた感じです。

1on1ミーティング第1ステップ「コネクティング」

小林 : 「コーチング、まどろっこしいや」と思っていた人も、もう一回学びに来られているような?

稲垣(友) : それはあります。10年前、駆け出しの頃は、名古屋の文化センターで6回シリーズでやっていましたが、今はもっとボリュームアップしてやっています。あの頃、学びに来て、もう終わったと思った人が、また来たりしています。

小林 : 1on1ミーティングで、経験学習を回していくことについて、踏み込んでいきたいと思いますが、具体的な方法はいかがですか。僕もクライアントさんとミーティングをしますが、「最近どう?」という話から、相手が結果出ていないときに、こっちはもっと結果を出してほしい、現実結果が出せていない、いろいろ悩みを聞いていく、聞きながら自分の頭の中で解決方法を考えて、「とにかく、これをやってくれ、以上」みたいな感じになって、本人も「分かりました、やります」と言いながらも、納得してないのか、自信がないのか、また1週間ふたを開けてみると、「何もできませんでした」。これが世の中のよくあるパターンですが、これをどうやって打破していけばいいですか。

稲垣(陽) : 今の話だと、コーチ的に言うと、「コーチは解決しない」というところです。正弥さんは、「なんとか解決してあげよう」と思って、相手の話を聞くと思いますが、私はそういうふうに話を聞きません。それよりも、「この中で相手が何に気付くかな」というところにアンテナを立てて聞くので、解決するのは相手ですそこのスタンスが違うかもしれません。30分の内訳、ポイントなどはあります。

稲垣(友) : いろんな要素が絡んでくるので、一概には言えませんが…

稲垣(陽) : 大きく前半・後半に分けると、皆さん、分かりやすいかもしれない。

稲垣(友) : 例えば正弥さんの例だと、その人に何かあるように思いますよね。それを最終的にはフィードバックする。「なんか最近おかしいように思うんだけど」という話。本質を突かないと、人は変わっていきません。でもそれを最初から言うと、傷ついたりするので、僕なら、それは後半に持ってきます。その前にやらなければいけないのは、毎回会っているとはいえ、同じ人間で違うことをしているので、まずエネルギーを合わせるということ、僕らはコネクティングと言います。社長の場合、どうしても責任を持っているから、エネルギーが高い。社員はそれを受けてなんとかやらなければいけないというところにいるので、エネルギーは高いけど、全然違うところを見ています。こういう状態で2人が話し始めると、全然違う話になるということが多いです。

小林 : 萎縮してしまうことがありますよね。

稲垣(友) : まず、社員にしゃべらせる必要がありますね。社長が下りてくる感じ。僕たちはシーソーに例えますが、社長は上にいるので、この人がしゃべってはいけない、いかに社員にしゃべらせるかというところ。

小林 : コネクティングされた状態というのは、どういう状態ですか。

稲垣(友) : 「自由に話していいんだ」と思える。それが一番最初に目指すことです。

小林 : フラットに言いたいことが言える状態ですね。結果が出てない場合、言いづらいと思いますが、そういうときはどうやって、言いたいことが言える状態にもっていくんですか。

稲垣(友) : 結果という視点で言うと、出てないと言いづらいですよね。だから違う話をします。

小林 : 例えばどういった話を?

稲垣(陽) : その人が好きなことや、その人に子どもがいるなら「最近、子どもさんどう?」とか、思い切り違う話。

稲垣(陽) : アイスブレイク的な季節の話なども一つですよね。そうは言っても、結果を出したいという思いはあると思うので、結果を聞くというより、もちょっと細文化するイメージです。「結果どう?」と聞くより、その周りのこと、「今週どんな1週間を過ごしたの?」「今週一番うれしかったことは何?」など、同じ結果を聞くのでも、ちょっと視点が変わると話しやすかったりして、このエネルギーが合ってくる可能性があります。自分のことをしゃべればしゃべるほど、人はエネルギーが高まります。自分のことを聞かれる、自分のことをしゃべれるというと、そこに安心感があって、上がってきます。

小林 : 自分のことをしゃべり始めて、否定がなければ、だんだん安心してもっと話せるようになる。

稲垣(友) : 基本はそうですよね。

稲垣(陽) : 全然関係ない野球の話を15分する必要はなくて、本題に行っていいんですが、本題の質問を、もう少し相手が答えやすいように聞いてあげると、いろんなことが出てくると思います。

小林 : 具体的なケースと理論を並行して話していくと、僕も理解しやすいんですが、聞いてる方もそうだと思います。例えば、クライアントさんに対して、契約が取れてないという方がいらっしゃる。この方と僕がミーティングをするとして、契約が取れてないということは明確な事実ですよね。「なぜ契約取れないの?」というのは、最悪な質問のような気がしますが、ここからどうやって細分化して、会話を始めていけばいいですか。

稲垣(陽) : まず大きく、事柄と人というところに分けられますよね。よくあるのが企業だと、「結果取れてないね。今週何人行ったの?誰に会ったの?なんて言われたの?」、こういう事柄を聞くと、相手としては詰問されている気分になります。情報が整理される感じにはなりますが、あまり広がりません。であれば、「それに行ったとき、どんな気持ちだったの?」と気持ちや感情を聞いてみたり、「行ってみて、うまくいきそうな可能性は、どんなところに見えたの?」とか、「結局は取れなかったけど、何か可能性を感じたことはあった?」とか、要はその人の思考や感情を聞いていくと、それに正解・不正解はないので答えられますよね。

小林 : 結果が出てないということは変わらないけど、感情や思考に正解はないから、そこを聞いていくと。

稲垣(陽) : そこを聞いていくと、「そういうふうに思ってたんだね」とこちらも分かりますよね。取れなくても平気そうな顔をしてるように見えるけど、「苦しかったんだね」「頑張ろうと思ってたんだね」と言って、その人のことが見えてくる可能性が結構あります。

小林 : それでコネクティングされて、フラットに話せる感じになりました、これが第1ステップですね。

1on1ミーティング第2ステップ「インタビュー」

稲垣(陽) : その後、第2ステップ。事柄と人を分けて、もうちょっとその人の思考の言葉を聞く、これをインタビューと呼んでます。30分でやるとすると、これが前半15分ぐらいです。例えば「やる」と言ってやらなかった人、正弥さんはこの人はどう思ってると思いますか。

小林 : チームだと申し訳ないという感じが強いと思いますし、どんどん自信がなくなっていっちゃう、自分に対してもそうだし、自分が扱っている商品・サービスに対しても、「これって世の中に受け入れられないんじゃないか」と、どんどん自信がなくなっていくような感じがします。

稲垣(陽) : そういう気がしますが、よくよく聞くと、違うことを思っていることが多いです。実はそこまでへこんでなかったり。それよりも忙しいことがあって、しょうがなかったと思っていたり。

小林 : そういう経験、ありますね。

稲垣(陽) : インタビューは英語で「inter内側」を「view見る」という意味があります。思考、感情、本人がどう感じているのかを聞けるといいです。
その他に、色々な現状について質問をしていくことで「気づく」ことを目的に行なっていきます。

1on1ミーティング第3ステップ「クロッシング」

稲垣(陽) : それぐらい、私たちの思っていることとビンゴなことが少ないんです。その誤解がちょっとずつ埋まったところで、後半、クロッシング、私たちの意見を始めるというのが第3ステップ。

小林 : クロッシングというのは?

稲垣(友) : こちらの意見もクロスさせる。ここまでは向こう主役で聞いてるだけ。こちらも掛け算していかないと、状況は変わっていかない。そこで初めて、言うことが聞けると思います。

稲垣(陽) : そこまで聞くと、ようやく言えます。さっきのだと例えば、「もっと落ち込んでるかと思ったけど、まだまだいけそうなんだね」というフィードバックができるかもしれない。「3件ぐらいは平気なんだね。じゃあ、10件ぐらい失敗してもやれるぐらいの根性あるんだね」と言えるかもしれない。共創を生み出すために、掛け算をするのが第3ステップでクロッシング。

稲垣(友) : 「自信なくなってるのかと思ったけど、どうだったの?」みたいな話。

小林 : こちらが思ったことも、クロッシングで言っていく。

稲垣(友) : 「そうなんですよ」と盛り上がって言うかもしれないし、「いや、実はそんなことないです」と言うかもしれないし。本質的なところをきちんと突くと、不思議なことに変わります。僕らは違和感と呼んでいますが、「なんかおかしいな」というのをこのセッションで伝えると、そこからいろいろな物事が生まれていったりします。多くは上司部下で関係性もあるので、そこを突かないので。

小林 : 突けないというか、とらえてないこともあるし。

稲垣(陽) : 突くと、結構鋭い言葉を言っちゃうんです。「だから君は駄目なんだよ」とか。

稲垣(友) : 自信を落としてしまう。

稲垣(陽) : 駄目な部分を細かく見ると、「3件でも、まだいけるって思っちゃったんだね」とそれはでも、「3件でももうちょっと真剣に考えてほしかったな」という言い方もできますよね。

小林 : クロッシングの次のステップは?

稲垣(陽) : そこまで話をして、必ず最後に、「次、また会うけど、何する?」と行動を必ず本人に聞いてほしい。クロッシングのときに、提案もOKなので、「これやったらいいと思うけど、どう?」と。ちなみに、提案とアドバイスは違います。アドバイスというのは、「君、これ、やったほうがいいよ。これやったら絶対うまくいくから、これやってね」。提案は、「これやったら、すごくうまくいくと思うけど、どう?」と、あくまでも決断や決めるのは相手。30分間、基本主体は全部相手に渡している感じが大事です。

そういうことをしながら、最後の5分ぐらいですが、「次回、何する?」というところを聞いてあげてほしいです。それをきちんと言語化して言わせる。そうすると、「これをやります」という人もいますが、多くはちょっとずつ変わります。「こういうふうに言ったけど、こういうことをやろうと思う」と言った言葉は、必ず本人の言葉になるので、「それをやるのを応援するね」と言って、最後第4ステップは、エンパワーメントといいますが、そこに向けて本当にやるのを応援してるねと、相手を力付けます。

1on1ミーティング第4ステップ「エンパワーメント」

小林 : エンパワーメントのゴールというのは、どういう状態ですか。

稲垣(友) : 声のトーンが上がったり、「頑張るぞ」という雰囲気、顔が上がるとか笑顔が見えるとか、未来が見える感じになるのが大事です。

小林 : 30分の中で、最初がコネクティングでエネルギーを合わせる。インタビューをしていく。そしてクロッシング。四つ目がエンパワーメント。実際に自分でもそれをやっていこうと思ったときに、こういうケースはどうなんだろうと思うのが、例えば契約を取るという得たい結果に対して、電話を掛けるなり、メールを送るというのは、効果的な行動の一つになってくると思いますが、例えばエンパワーメントが終わったときに、「じゃあ、私、営業の本を5冊読みます!」というのは、「それだけじゃ、結果出ないだろう」というのがあると思いますが、そのずれはどういうふうに修正すればいいですか。

稲垣(陽) : 契約の期間にもよりますが、最終的に人は本人が気付かないと変わらないというのがあるので、例えば5冊読んで、それがその人の自信につながる可能性もなきにしもあらずですよね。まず一つ、「待つ」というのはあります。「分かった。じゃあ、5冊読んできて、感想聞かせてね」というのもあると思います。期間が許せるのであれば、一回待つというのは一つです。でも「とりあえず10ページ読みます」とか、それぐらいやれよ、というものであれば、コミュニケーションにリクエストするというスキルがあって、命令でもお願いでもなく、リクエストというのは対等な感じで言います。

「一つリクエストしたいことがある」と。それはその人の才能や能力を信じた形で言う必要がありますが、「君は5冊では少ないと思う。5冊読むより、行動したほうが、もっともっとうまくいくと思う」というので、「5冊読むのと一緒に、3人の人に会ってほしい」とリクエストとして言います。ただ、判断は相手なので、そこで「いやぁ…」と言ったら結局行動しないので、やっぱり決断は相手に任すという感じですかね。

目標に対してロックするために

小林 : 僕が成長して結果を出せたのは、目標に対してロックしたという話がありましたが、大きな結果を出したいと思えば思うほど、リスクのいかないことにチャレンジしていく必要があるかと思います。

例えば契約を取るということに関して、自己完結できることだし、ほぼ失敗がないことなので、ハードルが低いと思います。でもいざ契約を取るとなると、断られるリスクを抱えながら提案していく必要があるじゃないですか。でも失敗が怖いから連絡しないといって、メールや電話ができなかったら、結果も生まれないと思いますが、その辺りはどのようにすればよいですか。

稲垣(友) : いろいろなことが絡み合っているので、目の前の人に対して、どう自分がチューニングしていくかという問題になってくるので、本当に場合によりけりです。ポイントは、その人が目標にロックしているかということと、あとタイプもあります。正弥さんのように、ガンガンいくタイプの人であれば、「そうじゃ駄目だろ!」と言えば、「分かりました!」といきますよね。

そうではなくて、ネガティブで失敗が嫌いな人だと、やっぱりそうなります。逆にそういう人は、目の前の決めたことを、ちゃんとやります。そこで自信を出させていく、自信を持たせる。小さい目標でも、一度自分でやり切って自信をつけると、それで勢いが増します。それがその人に合っているかどうかというのは、こっちの判断です。その辺を見ての判断になると思います。

あと、ロングレンジで見て、時期的にその人が、今もしかしたら落ち込んでいる時期かもしれない。そこで言い過ぎてしまうと、より落ちていって、戻ってこれなくなるときもあるので、その辺りの見極めが大事かと思います。

非認知能力という目には見えない力

小林 : 今回、相手に結果を出してもらうということがテーマですが、どれぐらいの期間で達成できるような結果を設定したらいいというのは、何かありますか。

稲垣(友) : 最低単位、一番短くて3カ月、通常は6カ月。コーチを付ける、1on1をするということは、自分の何かを変える必要がある。認知能力、非認知能力というものがあって、認知能力は学力、非認知能力というのはやり抜く力や好奇心。

稲垣(陽) : 昔の通信簿でいうと、国語、算数、理科、社会、5段階評価、あれは認知能力。その横に、「あいさつをよくする」「提出物がなんとか」とかあって、どういう基準で付けているか分からない項目、あれが非認知能力と呼ばれているものです。

稲垣(友) : 最近研究で分かってきたのは、将来的に成功する人は、この非認知能力の数値が高い。子どもの頃に、幼稚園に行く子と、いかない子で実験をしました。幼稚園のときに非認知能力のトレーニングをした子と、そうではない子で、学力での差はなかった。でももっと30年後、40年後になると、幼稚園時代に非認知能力のトレーニングをした子たちのほうが、圧倒的に収入も高いし、学歴も高いという結果が出ました。

ということは、僕らは、何か目の前のことをやるという下に、非認知能力、目には見えない力があって、そこが変わっていく時間が必要なんです。パッとやれる人と、やれない人がいて、やれない人はそこを変えていかないと変わらない。そして、習慣で変えていくのがすごく大事で、習慣って21日、3週間で変わる。定着するのに3カ月。今の研究では66日になっていますが。コーチはそこも見ていく感じです。目の前のやるやらないよりも、この人の下にある能力みたいなところも、ちゃんと刺激、トレーニングしていくことが大事です。

小林 : その3カ月間の中で、得たい結果を最初に決めて、得たい結果をつくり出すための行動習慣みたいなものを、個人で決めたりするんですか。

稲垣(友) : 個人で決めます。

小林 : 僕、何年か前にダイエットで10何キロ落とせたんですが、自分ができたからこういう言い方をしているわけではないですが、ダイエットって割と簡単だと思うんですね。なぜかというと、ダイエットは、10キロやせるための行動習慣があって、結果も体重という分かりやすいスコアがある。意識すべき因子と、やるべき行動が非常にシンプルなので、やりやすい。だけど現実の、売り上げるとか、契約を獲得するとかは、因子が多いじゃないですか。この中で適切な目標設定や、結果を生むファクターを何にするかとか、その選定が重要だと思いますが、その辺りは何かありますか。

適切な目標を設定するために

稲垣(友) : 僕らが関われるのは、コルブの学習サイクルの支援しかありません。上司と部下が、お互い対等になって、一生懸命やらないと見つからない時代に来ていると思います。ダイエットは何やったらいいか分かるので、あとは支援と仕組みさえあればできるけど、そうではないので、上司だけではなく、クライアントもちゃんとあれを回せるようになっていることで、答えが最終的に出てくるみたいな感じ。

稲垣(陽) : 人って、必ず大事にしている何かがあります。正弥さんは、結構目標ロック型ですよね、目標、好きでしょ。でも世の中の多くの人は、目標が嫌いな人がいるって分かりますよね。

小林 : 頭では分かりますが、実感を伴っては分かりにくいです。

稲垣(陽) : よく研修で、「目標、好きな人?」と聞くと、「好き」に手を挙げる人のほうが少ないんですよ。3割、4割です。6割ぐらいは、目標は嫌な感じに思う。でもその人たちがやらないかというと、やっているわけで、その人なりの、何か突き動かされる、私たちは価値と呼んでいますが、人が自然と引きつけられたり、やる気になったりするものがあるわけです。それは何かを見ていく必要がある。

それが目標だったら、「あなたの目標、これだよね」と毎回言ってあげる必要があるし、毎回言えば言うほど、重くなる人がいるのであれば、その人は目標ではなくて、「それをやると、絶対あなたの周りの人が喜ぶね」と、人の喜びで動く人がいるかもしれない。この人は何で動くのかを見る必要があるんですが、それをどう見るかというと、それはその人が使っている言葉遣いとか、成功したときのポイント、「あなたはなぜそれがうまくいく人なんだろう」というところで興味を持って、聞いてあげる必要があります。

対等な立場で対話することの重要性

小林 : その人は何が動機付けになるのかというのを、とらえていく。

稲垣(陽) : 日本人は、失敗したくないという人が多いんです。ハードルは、できるだけつぶしたほうがいいという人がいるので、そういう人には、「ハードル越えようよ!」と言うよりは、「ハードル、どうやればつぶれるかな」と、つぶし方を一緒に考えていってあげたほうがいいわけです。

小林 : それこそまさに非認知能力が必要になってくるんですね。今よく言われているのが、AIロボットが、人の仕事の大部分をやってくるという中で、人が何をもって自分の市場価値を出していくのか、重要になってくると思いますが、その中でコーチングスキルって、まさに人間たるスキルというか、身につけていく重要なスキルかと思いますが、その辺り、ビジネスのシーンや教育現場で見ていてどうですか。

稲垣(友) : 企業でも、最終的にどういう人材が欲しいですかというと、コミュニケーションが取れる人、あいさつは最低限で、人ときちんと対話できるというのが上位になってくる。そういう調整は、AIでできないわけですよね。

小林 : 1on1ミーティングをAIとやりたくないですよね(笑)

稲垣(陽) : 対話という言葉は、昔から言われていたと思いますが、ここ最近やたら聞く気がします。実は、多くの上司・部下の間で、対話ってあまり起こってないんです。「これ、やっておいて」「はい、分かりました」とか、「なんで、やらなきゃいけないんですか」「とりあえず、やれよ」という、せいぜい会話が2往復ぐらいで終わっていた時代がずっとあったんですが、そうではなくて、ずっと対話ができるというところで、コーチングのスキルというのは、あらためて注目されている感じはします。

稲垣(友) : 対話によって、あらたなものが生まれたりするじゃないですか。人は、ほとんどのところが誰かとしゃべっていたり、人からエネルギーをもらっているところが多いので、対話スキルというのは、今後も新しいことを生み出すことに価値があると思います。

稲垣(陽) : ただ飲み会で、楽しい話をするのではなくて、ここにどれだけクリエイティブだったり、新しさをつくる対話ができるかというのが、求められているのかなという感じはします。

小林 : 共創、共に創るというキーワードを、お2人が提案されているように、上司と部下の関係でも、上司がやったやり方が、部下のやり方で通用するかというと、通用しないケースもある。その対話の中で、新しいものを一緒に生み出していくという感じですね。

稲垣(陽) : ちょっと前までコミュニケーションというと、まず傾聴、聞きましょうだったんですが、それはこっちがエネルギーを下げてあげるというイメージでしたが、そうではなくて、クリエイティブにいこうとすると、こっちもエネルギーを上げないと無理なんです。相手も上げさせ、こっちも上げていくところで、新しいものって生まれくるんじゃないですか。

稲垣(友) : 僕らの共創のキーワードは、対等性です。どうしても上司・部下、この状態でコーチングをやっても、部下は「はあ」「へえ」と言うだけなので、そうではなくて、同じ人間として、同じものを生み出すものとして、本気で上司が「どう思う?」「俺のやり方はこうだけど、君、どう思う?」というように、対等な位置からやることで生まれるものは、結構あります。

共創コーチングを世界へ

小林 : 共創コーチングというメソッドを、個人や企業に提供されている中で、2人の今後のビジョンや展開を教えてください。

稲垣(友) : 共創コーチングは、基本的に企業だけではなく、あまねく上下関係が生まれるところ、先生・生徒、スポーツの指導者・選手、親と子、これをなくすというか、これを解決する。共創コーチングがあることによって、僕は教育が楽しくなって、お互いにいいものだと思ってもらうのがビジョンです。

稲垣(陽) : 我慢するとか、相手だけをではなく、こちらの力も使うので、お互いの才能や能力が発揮されていく、そういう関係をつくる場だと思っているので、日本を飛び越え、アジアや南米へ。

コーチングはもともとアメリカから入ってきたものですが、私たちが考える対等性や、掛け算をしていくというのは、すごく日本的でもあります。日本の中に根付いている文化だったり、徳を積むということも含めてなので、そういうのをひっくるめて世界展開をしたいと思っています。

稲垣(友) : 僕は昔教員でしたが、みんなを対等にして、賢いやつは、みんなから聞かれることで役割になっているし、学力がない子は、「分からない」と言うことで、みんなが学ぶ機会があったりとか、そういう共創をうまく生み出す先生が、たくさんいました。日本の教育は、全世界に見ても、下があまりいなくて、底が結構上がっているといういいところがありますが、上も生まないという感じがあるので、これを学ぶことで、日本の教育力を上げる、それも目指したいと思います。お互いの才能を掛け算できる教員、それをつくりたいと思います。

「競争から共創へ」目標達成に向けて

小林 : 世界展開ということで、お2人も海外よく行かれてますが、日本型のコーチング、対話とかが、世界的に見たらどうなのかについて、お2人が感じていることを聞かせてください。

稲垣(友) : いっぱいあります。日本の意識というのは、すごく高いと思ってます。アメリカ人の非認知能力をトレーニングする本に書いてありましたが、日本の教育が大々的に載っていました。「日本の数学教育に学べ」という部分があって、各国とは全然違った授業方法なんです。残念ながら、日本がやろうとしている教育は、レベルが高過ぎて、多くの教員がついていけてないという事情があるから今の結果なんだけど、やろうとしていることはすごく高いといわれてます。

いい教育だけど、うまく浸透させられていないというのが日本。僕らの集団というのは、以心伝心というのがあるじゃないですか。こう言えばああだなとか、みんなラジオ体操やってるし。

小林 : 非認知能力が高いという意味ですか。

稲垣(陽) : 非認知能力が高いとは言えないかな。非認知能力の中で一番高いのは、相手を思いやる気持ちとか、人間関係のラインは高いほうだと思います。相手を配慮するという点では。逆に言うと、そこが強過ぎて、個の力で出ていくというのが弱くなってしまっている。変な雰囲気をつくってしまっていて、それを飛び越えられないというような。日本はそこが課題になると思います。でも各国いいところ、悪いところがあって、その中でも日本では教育に関して、頑張っているほうだなと思います。アジア、上海やシンガポールは、レベルは高いやつは高いけど、下がバーンと下。日本はちゃんと中間層でまとまっている感じ。

小林 : 平均的人材を育てるにはよかったと。

稲垣(友) : これからは変えていかないといけない。個性を活かして、イノベーションを生み出さないとやっていけない。2020年に教育も変わりますが、日本が苦手なのは、そのやり方をどう下していくかというのが、すごく難しい。

稲垣(陽) : 悪く言うと「平均だよね」となりますが、そこに散りばめてあるスキルだったり、底上げができているというのを、うまくスキルに落とせたらいいなと思います。優秀な人には、いろんな国から学んだものを付け足していけるといいなと思います。

小林 : いいものを持っていても、本人が気付かないと、自信も持てないし、使いこなせないと思うので、そういう意味では、今回の1on1のミーティングというのは、人が本来持っているものを引き出していく、すごくいいアプローチかと思います。

稲垣(陽) : 特に面談というのは、密室でクローズでされているので、何がされているのかよく分かってないですし、人は自分がされたことしかできないので、上司からされた面談のやり方を、脈々と受け継いでいるだけの可能性がすごくある。すごく昭和っぽかったり、古臭かったりするのが、結構あると思います。

小林 : これからもっと1on1ミーティング教えて、という個人や企業が増えていくと思いますが、これを聞いている方が、それを学びたいとなったときに、どうやればお2人から学べますか。

稲垣(陽) : まず共創コーチ養成スクールというのを、定期的に月1回、今のところ名古屋ですが、4コース開催されています。正弥さんから学んで、近々オンライン、どこでも学べる仕組みにするつもりです。

稲垣(友) : 学習定着率が上がる仕組みを考えています。

稲垣(陽) : 全国でできるのを、目指したいと思ってます。

小林 : ご夫婦でされているのがすごいと思っていて、それが共創コーチングの一番の強みというか。

稲垣(陽) : 「競争から共創へ」というキャッチフレーズですが、基本、夫婦って競うじゃないですか。競争しまくりの結果、これだとうまくいかないねというので生み出したのが、このクリエイティブの共創です。

小林 : お2人の経験学習の中から生み出されたんですね。

稲垣(友) : 正直、お互い才能があるわけではなくて、どちらかでは完結できない。世界に広めていきたいけど、僕一人ではできない。僕にはない才能を持った彼女の力が必要なので。

稲垣(陽) : それまでは、私にある才能を、同じように求めていたんですよ。でもそうではなく。

稲垣(友) : 目標を達成するためには、自分の力だけでは足りないと、ちょっと謙虚になって(笑)それが共創のポイントかなと思います。近ければ近いほど、僕らは相手に求めてしまうんですが、それは横なので、2人で上を見るというのが大事かなと。2人で見つめ合う時期は終わってしまいましたので、上を向くしかない(笑)

小林 : 夫婦も見つめ合うだけではなくて、同じ上を見ると。相手にどう成長して、結果を出してもらえるのかということで、お2人からコーチングや、1on1のミーティングについて、またその先のクリエイションな、幸せな世界を見つめていらっしゃると思いますが、そういうことについて教えていただきました。どうもありがとうございました。

2人:ありがとうございました。

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