特別セミナー 永松茂久 2020年ビジネス書ランキングNo.1 ミリオンセラー作家に学ぶ「売れる在り方」
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小林:今回は2020年ビジネス書籍No.1、ミリオンセラー作家の永松茂久さんにお話を伺っていきます。普段は「茂兄」と受講生の方も呼んでいますので、私も今回は茂兄と呼ばせていただきます。よろしくお願いいたします。
永松:はい、よろしくお願いします。
小林:私は今、3冊の本を出させていただいていて、3冊目の書籍出版のきっかけをくださったのが茂兄です。出版のメンターとしてご指導をいただいています。『人は話し方が9割』が、2020年のビジネス書ランキングNo.1に選ばれたということで、おめでとうございます。
永松:ありがとうございます。
小林:同時に『在り方』という本が、またベストセラーになっているということです。
この2冊にちなんで、これから本を出したい方、また1~2冊本を出して止まっている方に対して、活躍し続ける、売れ続ける著者の在り方を、今日は私も受講生代表で勉強させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
永松:よろしくお願いします。
出版業界の全体をプロデュース&ブランディング
小林:皆さんはもうご存知だと思いますが、最近の茂兄の活動や考えていらっしゃることを、まずは教えていただけますか。
永松:はい、ありがとうございます。株式会社人財育成Japanという会社を経営していまして、基本的にはその名の通り財産の「財」の字を使っていて、「あの人は宝だよね」と呼ばれる人を日本中に増やしていこう、ということで人材育成事業をやっています。
僕は今46歳で、40歳まではどちらかというと講演をメインでやっていました。ちょうど5年前に母が病気で他界しまして、その闘病生活をきっかけに、出版の方に力を入れるようになりました。
やはり「出版を本気でやるなら東京だろう」ということで、東京に引っ越して丸4年が過ぎました。
今やっていることのメインは出版支援の事業です。格好良く「出版プロデュース」と言ってくださる方もいらっしゃいますが、大きく出版支援業をやっています。
どちらかといえば、プロデューサーは、著者の本をプロデュースするという形がメインだと思いますが、僕がやっているのは出版業界全般のプロデュース&ブランディングのような、「アホかお前」と言われるような壮大なことを打ち上げてやっています。
出版社さん、書店さん、そしてもちろん今の著者さんとこれからの著者さん、そして読者さん。出版関係者全体を元気にしていくインフラ作りが最近の一番の僕たちのブームです。「執筆活動どこへ行ったの」と自分で突っこみたくなるくらい、そちらのことばかりをやっています。
そして今、正弥さんの企画がスタートしたばかりですし、著者さん何人かの作品、新刊を抱えていますが、コンセプトは「本の力で世の中を楽しくする」です。このコロナ禍の中で、実は、出版業界特にビジネス書業界が伸びたんですよね。
小林:意外ですよね。
永松:その伸びた中で、まさか年間ランキングを獲れるとは思っていなかったのですけれど、運よく『人は話し方が9割』が、1年ちょっとで60万部までいきました。毎年ありがたいことに、実売で毎月5万部近く売れています。
小林:とんでもない数字ですよね。
永松:このままいけば、ひょっとしたら年内にミリオンに行けるかも、というところです。
小林:どこの書店に行ってもランキングに入っています。先ほど「出版業界を盛り上げていく」ということをおっしゃいましたが、名実共にそのリーダーだなと思っています。
私の話をしますとコロナで4冊目の本が流れてしまいました。これは自分の準備も含めて流れてしまったのですが、延期したり、今年はペンディングになったりする人もいます。
著者も、おそらく出版社の人たちも、書店を休まなければならなかったり大打撃を受けて、「この先どうなるんだろう」と不安が全体に広がったと思うのです。その中で、ベストセラーをぶち上げたというのが、まさにリーダーに相応しいです。
「売れる本」に出版社や著者は関係ない
永松:僕はもともと、20年前くらいにたこ焼きの行商から始めて、飲食店は150~200席くらいの結構デカい店をやっていました。それをやってきてわかることとして、「そっちが行く道だよ」と、僕は神様ではないですが、自分の役割の方に進んでいる事業でスーッと上手くいくんですよ。
逆に、「止められているのかな」と思うくらい、頑張っても頑張っても上手くいかないことも結構あるじゃないですか。本の出版も、実は同じことが言えるのです。出版社の戦略的に、発売から初速を見るのもありますが、売れる本って何もしなくても売れるんですよ。
小林:これはすごいですよね。初めての著者さんは、キャンペーンをやるとか、とにかくみんなに「買ってね」と言ったり、クラウドファンディングをやったりだとか、出来ることは全部やる。それでもなかかな売れないような状況の中で、何もしないというのは衝撃的です。
永松:もちろん、やった方が良いですよ。やらないよりも絶対にやった方が良いです。けれど、以前は販売促進的なものは本当は出版社さんのみの役割でした。
今は少し変わって、著者さんがどれだけ売れるのかということが、出版の時の選考基準に入って来たのですけれど、本当に本の力でベストセラーを出すためには、100パターンくらいのタイトルと装丁を、お金を掛けてでも作った方が良いですね。
小林:それはまさに、売れ続ける著者の在り方としては非常に重要なキーワードですよね。
永松:売れる本って、出版社さん、著者、関係ないです。これは読者さんから見た時のことで、おそらく「これって何出版から出しているんだよな」という人は、よほど読み込んでいる人です。
おそらく、ほとんどの人がパッと本を見に行って、パッと手に取る時に、一番に見るのはタイトルと帯です。僕は今まで、出版支援やプロデュースで人の支援もさせていただいていますけれど、最初は著者名を入れずに装丁を作ります。
小林:著者のイメージが入らないようにですね。
永松:著者名自体を最初から外します。そこに○○、と丸で著者名をどこに置くか決めておいて、誰の本なのかも言わずに見せます。うちでも選考委員のような人たちがいて、「うわ、おもしろそう。その本読みたい」という本はタイトルが9割だと思っていて、これのパロディで良いです。
もちろん、中身は大事ですよ。それは当たり前ですけれど、「中身は良いんだけど、この装丁じゃ、この表紙じゃ、人は取らないよね」と。それぞれプロデュースしている人にも、コンサルで「とにかく書店は読者と著者のお見合い場所だ」と言っています。
正確に言えば本、ですよね。あれだけいっぱいの本がある中で、0.1~0.2秒でパッパッと全体を見ている中で、「あっ」と引っかかってまず手に取ってもらえること自体が、お見合いパーティでいうところの「あの人と話してみたいです」ですよね。
小林:なるほど。
永松:正弥さんは本好きなので、じっくりいろいろ見て買われるかもしれないですけれど、そのうち8割は衝動買いなのです。書店にふらっと行って、気になる本があって手に取って見る。その時に「著者は誰だろう」とは言いません。それを言っているのはごく一部です。
そうではなくて、人はそのタイトルで「これは自分のためにある本だ」と。だから、タイトル、前書き、目次ってこれがほとんど勝負なのですよ。
小林:自分自身も3冊書いて、そこは本文に入れる力と比べたら何十分の1くらいのエネルギーしかかけていなかったと思いますね。
永松:そこに、今一歩飛ばない原因があると思います。
いろんな本を見ている営業が企画から入るメリット
永松:それともう1つ、先ほど言いましたが、出版社や著者の力は関係ない。読者は、その力をそれほど大事にしていないです。「○○さん、本を出したんだ、じゃあ買おう」と言われるビジネス書の著者は日本で氷山の一角です。
次々と新刊が出てきて、新刊が書店のどこに置かれるかというときに、初めて出版社のパワーが出てきます。「○○出版だったら良いよ、くるよね。それなら平積みで置こうか」。そこは、編集者さんというよりも営業の方の力になってきます。
僕が今でもやらせてもらっている出版社さんたちの中には、営業の方たちが最初から企画会議に入っているところもありますよ。普通は、編集者が作って、営業マンは著者と会わないのが業界のセオリーです。
なぜ僕がこれを知っていたかというと、20年ほど前、僕は出版社の営業をやっていたからです。「営業は著者と会えない」という伝説があって、昔はもっと激しかったと思いますよ。
小林:日本のミリオンセラー作家、著者でもその経歴の人はいないですよね。
永松:出版社から銀だこに行って25歳でたこ焼き屋を始めた、というのはおかしな経歴だとは思いますけれど、よくよく考えると、その本を書店へ売り込みに行ってくれるのは営業の方なんですよね。
だったら、営業の方はいつもいろんな本を見ているので、最初(企画)から入ってくれた方が良いです。それで、この『人の話し方が9割』を作ったのですけれど、もともとこの本の発案者は営業マンですからね。
小林:そうなんですね。
永松:すばる舎の原口君という、もともとはきずな出版にいた方ですけれど、きずなの時からずっと一緒にやってきました。『心の壁の壊し方』という本を作った後くらいから「茂兄、話し方書いてください」と言われていて。僕は「書かん!」と言っていました。
5~6年前くらいからですかね。僕は全く意識していなかったのですけれど、コミュニケーションの取り方が「お前は人たらしだよね」と、ずっと言われてきたのです。その「『たらちゃん術』を絶対に本にしたい」と、ずっと言われ続けていました。
小林:なるほど、原口さんもずっとたらされてきたからですね。
永松:たらすつもりはないのですがね。
出版に関わる人たちが集まって輪を広げている
小林:茂兄のミリオンのパーティーに出席させていただきましたが、自分自身も含めてほとんどの著者、もしくは本を出したい人が、出版の営業の方や書店の売り場の方とほぼコミュニケーションを取っていないと思います。
茂兄のパーティーは営業の方が多くて、そこが売れる著者の在り方として全然違うと思いました。
永松:みんなと一緒に飲んだりして、そこら辺を最初から仕込んでいるというか。向こうからどんどん始まって、編集者、営業マン、書店、出版社向けの新聞社の社長や、実際の出版社の社長まで、この輪がどんどん大きくなってきているのです。
僕自身のディアオフィスという出版支援のオフィスがあるのですが、ディアブックス構想も大きくなっていて、「そうだ、本の力で世の中を元気にするんだ」と盛り上がっています。
小林:願わくばその輪の中に入りたいと思いますよね。
永松:もちろんですよ。そう思ってもらえますか。
小林:私が3冊目に茂兄のサポートで『他力思考』という本を書かせていただきましたけれども、本も含めて結構自力思考に陥りがちだけれども、書店さんや営業さんを含めたチーム戦なんだなと。そのチームの中に全然入れていないなと。
永松:いや、正弥さん。それが普通です。今の現状は。だから、この現状を変えていこうということです。本当に、周りの人は僕を著者だと思っていないですもの。
小林:チームという感じですね。
永松:昨日、それこそ「茂兄組」と呼ばれたのですけれど、僕とうちのメンバーがいて、A出版B出版C出版とみんなで混ざっていつも飲み会をするんです。
小林:それは奇跡ですよね。
永松:飲んでいて良い企画が出たら「はい、それいきます」とじゃんけんをしたりしています。じゃんけんで取りあっていて、何と雑な企画会議なんだというか。でも、みんな仲が良いですね。
小林:今回、「売れ続ける著者の在り方」というところで、茂兄の在り方が、自分の本を売りたいだとか、この出版社でベストセラーになりたいとかではなくて、出版業界を元気にしたいという、見ているところの在り方が全然違うんだなと思います。
永松:「じゃあ自分のメリットを考えていないのか」と聞かれれば、それは人間ですから思いっきり考えますよ。ただ、業界全体が活性化してくれた方が、後々に有利です。
業界の元気がなくなって「個人で頑張ってね」となったら寂しいじゃないですか。プレッシャーもかかりますしね。僕のところはありがたいことに、出版人たちのチームと正弥さんのような著者さんたちが、にぎやかに集まってくれるので、するっといきますよね。
売れる著者への道は著者の近くにいくこと
小林:改めてお聞きしたいのですが、今聞いている皆さんもすでに本を出していたり、素晴らしいコンテンツを持っている人たちばかりだと思うのです。それでも本が売れなかったり、「出版社の人たちがもっと頑張って欲しかった」という気持ちもあるかもしれない。
もっと出来たのに、出版社さんたちとの出会いがなかったり、そういう人たちはどういった在り方にシフトしていけば全然違う、売れる著者という道が拓けていけるのでしょうか。
永松:ありがとうございます。『影響力』という本の最終章に、”本を書こう、その夢は諦める必要など全くない”と書かせてもらっていて、後ろが全部出版のことです。”本を書きたかったら○○の近くに行きなさい”(233P)。答えは著者の近くに行くと良いよということで、売れていたら尚可なのですよ。
ビジネス書の作家さんの近くには、間違いなくいつも編集者さんがいます。だから、そこにいるだけで「あの人誰なの」という話になってきますよね。
いきなり企画書を送り付けられるよりも、「いい卵がいるんだよ」と、著者のお墨付きや推薦の方が、編集者さんは話を聞きます。「この著者が紹介するのは間違いなく良い人のはずだ」という信頼関係ですよね。
今、THE ONEの皆さんは正弥さんの近くにいるわけじゃないですか。著者の周りには著者がいるんです。仲が良いここの2人もそうですよね。だから、今こうやってここにいることがある意味で、出版にめちゃくちゃ近道なのですよ。
僕は正弥さんより10年くらい長く生きていますし、早く本を書き始めているので、そういう意味では知り合いが増えちゃったのです。
小林:通常の出版のセオリーは、企画書を書いて持ち込んで、という基本のところが、紹介でいくというところなど全く違いますね。
本は100%読者のためのもの、読者に向き合うことで売れる本になる
小林:本を書く人の中には「自分は良いコンテンツを持っているから競争心でなかなか著者と仲良くなれない」とか、劣等感を感じてしまって「自分なんてその輪の中に入れない」といったマインドを持たれている方もいるのかと思いますが、売れている著者さんに繋がるという在り方はどうでしょう。
永松:考え方です。ベクトルがどこを向いているかによって、その人の在り方は大きく変わってきます。出版が夢だ、というのは良い夢だと思っていて、その夢は応援しようと思いますが、本の世界は基本的に投資業です。
自費出版は別ですけれど、商業出版は出版社が投資家です。何百万というお金をかけてやりますよね。
理屈的にいうと、本当は著者さんって思ったよりも力がありません。威張っている人もいますけれど、そんな人たちは売れているからチヤホヤされていますけれど、売れなくなったらポイ捨てですよ。
やはり投資の世界とは、そういうものですからね。今売れているところに投資をする。そういった大人の事情的なものがあります。
僕が思っていることですけれど、本はそもそも100%読者さんのためにあります。「書きたいことを書くんだ」と、ここまで書き続けさせてもらえたのが僕にとってありがたい話ですけれど、出版社さんには結構、志を持っている人が多いです。
「本って読者さんが喜んでくれてなんぼだよね」という、その在り方に共感してくれた出版チームはやはり売れるのです。著者のブランディングだとか、ビジネスが上手くいくというのは、結果的に売れちゃえば絶対に上手くいくようになっています。
そこに何らかのリストを最後に習得するページを入れておく、入れないとか具体的な方法はありますけれど、入れなかったとしても検索して、あればあったで尚良しですが、無くても熱のある読者さんは必ず見にきてくれます。
大事なのは、多くの人の手に届くことです。そう考えた時に「本は100%読者さんのためにある」と考えたら、「自分なんて」など劣等感なんて関係ないですよ。読者さんには全く関係ない話じゃないですか。
「こうやって世の中を良くしていきたいんだ」というノウハウや「今までにやってきたことは絶対に人を救う」という熱意がある著者の本は、原稿段階で周りに火をつけますし、編集者さんもその熱量を感じます。
何より感じるのは、僕も書くプロ、本を作るプロとしてやってきましたが、読むプロは読者さんたちなので。読むプロたちに役に立つ、喜んでもらうコンテンツって何だろう、何に困っているんだろうと、ずーっと年がら年中考えていたら、その人の本は絶対に出ます。
小林:その在り方によって、素晴らしい編集者、出版社、書店の方や営業の方と周波数がばちっとあう在り方と、「何かこの人違うな」というのは、はっきりしますよね。
永松:ありますね。サンマーク出版の植木社長という人がいて、出版業界の中では本当に尊敬している方です。植木社長の『思うことからすべてがはじまる』という本は、著者を志す人や、出版って何なのだろうと興味がある人は全員が読んで欲しい本です。
柔らかく書いているので、パラっと読んで「ああそうなんだね」と、わかった気になりがちな本ですが、超ヘビーローテーションで読んでもらうと、「あ、こういうことか」と。結構厳しいことも書いています。”ベストセラーは売れなかった本の残骸の上に成り立っている”とか。
新文化さんという、とてもかわいがってもらっている出版社の社長さんが、「断裁の現場に行こうや」と言うのです。倉庫に眠っている売れない本がシュレッダーに掛けられる瞬間を見に行こうと。
行きたくはないですけれど、見ておかなきゃ。だって本が死ぬ瞬間だから。それが煮られて紙になって、再利用されるんです。怖いでしょう。
小林:売れる本の元の紙になるわけですね。
永松:自分が神経を注いで作ってきたコンテンツや実績の英知が、形になったものが出版じゃないですか。正弥さん、どうですか。正弥さんはずっと売れているから良かったけれど、自分の神経を注いでいる本が断裁されて、パラパラと落ちていく瞬間を想像したらどうですか。
小林:何とも言葉にならないですね。出版は自分の価値というのか、出産に例える方もいますが、「これが大事なんだ」という自分の子ども、自分の命ですよね。それがシュレッダーにかけられると自分が切り刻まれているような感じですね。
永松:本当にそうですよ。だからこそ、やはり良い本を作らなければいけない。「売れなかったけど、これ良い本だよね」と言いたくなるじゃないですか。
厳しいことをいうと、良い本は売れた本の中からセレクトされる本です。やはり、売れないと「良い本だね」というたたき台にはあがらないから。
小林:どんなに自分が素晴らしい本だと思っても、売れなかったら良い本にはならずに、知られずにシュレッダーに行くと。それは本当に著者としての在り方として、私も初めて聞きましたけれども大切なことだと思います。
著者のアピールなしで売れた『人は話し方が9割』
永松:目に見えないエネルギーの話をしてしまいますが、植木社長が「本はエネルギーのかたまりだ」「読者さんはこの著者に愛があるかどうかを無意識に絶対に感じる」と言います。
僕も、ここまで23冊書きおろしで書いてきて、ずっとやらせてもらってきた中で、読み返した時にその時の自分のエネルギーが乗っているんです。「調子悪いな」とか「乗っているな」とか、すごく感じますね。
なので、プロデュースというより編集に入るのですけれど、著者が一生懸命に書いたことを、熱くなったり、「そこはもっと強くいかなきゃ」というところを引っ込んだり、そこらへんに愛を込める作業というのか。
小林:お見合いの例えが、まさにそうですよね。鼻息荒く「自分は魅力的なんだ」というところも煙たがられてしまいます。
永松:残念ですし、もったいないじゃないですか。そうではなくて、まずは柔らかくたくさんの方たちに読んでいただきましょう。そのためにどうしたら良いかというところです。それと、何冊も書いている方は、いわゆるバックエンドを何冊か書いたらそれは一旦外した方がいいのではないかなと。
「この本ってよくみたら正弥さんじゃん」というくらいナチュラルに、「タイトルだけで買っちゃった」と、後で著者に気づいてくれるくらいの本が、今一番広まると思っています。
それを、実は話9で実験したのです。「著者名はすごく小さくても良いから」と、今までの本の中でデザイン的に最強に小さいです。
著者名を小さくして、『人は話し方が9割』というタイトルで手に取ってもらおうと。最初から、パート帰りの主婦、土日子ども連れで来たお母さんが、イオンの未来屋書店でふらっと買って変える本、という狙いで作ったのです。
小林:これは本当にすごいです。私はこの本が大ベストセラーになる前から読者ターゲットと購入のストーリーを聞かせていただいていたので、本当にその通りになっているなと。
永松:いろんなものがかみ合ったなと思っています。本には、その子が持った運というのがあるんです。時期、時、タイミング、編集者さんや出版社さんとのめぐり合わせ、コロナの時期で緊急事態宣言のど真ん中で出してしまった本だったりだとか。宣言が明けて7~9月あたりにポンと出してベストセラーになったり。
「あるな」という、その運はどうやって作るのかと言われればわからないですよ。でも、あるということを知ってもらうのは大事だなと思います。
小林:茂兄、話9が最大級の運を持っているのはわかっています。飲食店を何店舗も持たれていて、やはり飲食のビジネスの方はコロナ禍で最も自分たちの実力と関係のないところでものすごく影響を受けているじゃないですか。
それを「運が悪い」と思う見方もあると思いますが、日本でNo.1の本にになったところだとか、本当に強運かつ、「何か降りてきているな」と間近で見させてもらっているなと感じます。
永松:この本を書く前に、「今度は珍しく話し方の本を書きますよ」と言っていましたからね。そこからぽこっと出ましたね。
最近新しい本のプロモーションって書けないんですよ。何となく、真逆な事をいうかもしれないけれど、プロモーションはない方が良いんじゃないかと最近は思います。
初動を勢いをつけてやると、一部の書店だけとかで売れてしまうと、ちゃんとしたデータが見られないんですよ。ある店は10冊売れていて軒並み売れていないとなると、逆に「あ、仕掛けたな」となる。
小林:異常値としてカウント外になってしまう。
永松:今、恐ろしいことに出版業界のデータは「今日話9が何冊売れた、在り方が何冊売れた、20代に何冊売れた」など、ほぼ全部の出版社が見られるようになっています。紀伊国屋パブラインや日販トリプルウィンなどがあるのですけれど、2020年の日本一は、トリプルウィンという日販の全ランキングで1位だったので、完璧です。
ただトーハンは日販ほど大きくはないですけれど、シェア率は25くらいかな。トーハンが45くらいで、その時に何百冊差くらいで勝ったのです。
動く本は一部の書店ではなくて全国的にパラパラと動きます。「行ける」という時にエネルギーをかけた方が良いかな、と僕は思います。なので、いきなり初動で動かそうとするよりも、「一週間くらい様子をみませんか」と話しますね。
小林:これも恋愛に近いですよね。最初のデートで気合をいれまくると逆に外すというか。
あと、自分自身も希望を持ったのですけれど、話9はある意味著者の名前で売らない実験をされて、日本一になったということですよね。
データがあれば売れる著者に全部集中してしまうじゃないかというふうにも一瞬思ったのですけれど、逆に、無名な人でも誰でも平等にチャンスがあるのですね。
1冊1冊リセットされる出版では無名でも良い本が売れる
永松:ありますよ。無名な人の方が、今から売りやすいじゃないですか。もちろん、出版社さんとの兼ね合いもありますが、一番はタイトルですからね。そして、前書き、目次。その本が感動するかどうかはそれこそ著者の力量ですよ。
例えば、ありがたいことに僕自身もランキング入りさせてもらって、その前から平均部数が高かったのです。23冊出版してプラスアルファで文庫なども入れて190万部いったので。
なので、こうなると確かに著者名は出ますよね。斎藤一人さんとか本田健さん、中谷彰宏さんとか、ここら辺はみんな知っているじゃないですか。ひょっとしたら、知ってくれている人が買ってくれたのかと思うこともありますが、いつも不公平だと思うことがあります。
今売っているじゃないですか、売れていますよね。でも1500円です。今日誰かが出しても1500円。普通は番付みたいなものがあって、斎藤一人本は平均いくらだ、本田健さん本は1冊5000円だ、といった価格帯ランキングがあれば良いですけれど、毎回1500円で「よーいどん」。
ファンが買ってくれるというのは確かに初動が付きますが、それよりも良いタイトルの今日出したばかりの本が、いっちゃう可能性が全然あるのです。
小林:みんなに平等に、毎回0リセットされて。
永松:毎回そうですよ。1冊1冊0リセットです。出版業界全体も「良い新人を当てないとダメだ」と言っているのです。
出版社全体も新人の発掘が絶対に大事ですけれどなかなか、出版社も全国を飛び回って会いに行ってということが出来にくい世の中じゃないですか。そうなるとそれこそClubhouseで著者を探したりとかします。
良い人がいますもの。すごい人いるなって。「電子書籍自分で1冊しか書いてない、この人」みたいな人は出版社は大好物ですよ。だから、新人さんはめちゃくちゃ大事です。電子で全然売れなくても、編集や出版の方から見れば、「この素材は料理し甲斐があるな」という感じに見えると。
その中でもっと有利なのは、著者さんたちの近くにいれば、「電子書籍出したんですよ」や「電子読まないからプリントアウトしてもってこいよ」と言って「めっちゃおもしろくないか、これ」というのが結構あったんです。
前書きなどをパパっと送って、「編集長見てくれますか」と言えば、「おもしろいですね行きましょう」というケースは結構あります。
プロフィールを見る著者さんは結構多くて、皆さん勘違いしがちですが、どれだけすごいことをやったとか派手な人生だとかをプロフィールに書き込む人が多いことです。
でも編集者が見ているプロフィールは、「この人はこのメソッドで何人の人を救った」というところです。このメソッドを使うとこうなるという、使用前使用後の実績が一番に必要なんです。
どこかの山奥に登って、六本木ヒルズのトップに京をかまえたとかは、編集者は飽きてしまっていますからね。「それこそあなただから出来たよね」じゃないのです。
THE ONEの皆さんがやっているコンテンツを見てみたいです。使用前が使用後の輝いた姿に、読者さんがなってくれれば良いわけですよね。正弥さんのところでいえば、THE ONEのプログラムをやったら普通の主婦が月商300万、億プレーヤーが出てきたとか。
取材前に聞いてびっくりしたのが、八木仁平さんと僕はお会いしたことがないのですけれど、彼は20代ですよね。『世界一かんたんなやりたいことの見つけ方』。あの本を見た時に、「すごいコンテンツを書く人がいるな」と思ったんですよ。
なぜかというと、僕は「見つかったらおいで」をやっていたので、やりたいことの見つけ方は完全に除外していたのです。「こうやって段階的に再現性をもってやってできるんだ」「20代でこんな本を書く人間が出てきたのか」と。
すると正弥さんが「もともとTHE ONEの受講生ですよ」と。それはすごいことじゃないですか。
小林:彼は本当に自分と向き合って、誰よりも人が変わることを突き詰めているんですよね。
コンテンツは原液を薄めて、でも気持ちは載せて
小林:「そうか」と思ったのが、話し方が9割ってコロナ禍で人が分断されていた時に、人が話し方で幸せになったり、つながったりということを解決している本が売れるんだなと思いましたね。
永松:具体的に、こうするというところではなくて、一番は最後が「相手を思って話せばそれが最高だ」という、昔どこかの小さい頃に聞いたようなことを書いて締めくくっていますからね。
これを出す前も、プロジェクトメンバーに不安をぶちまけていたのですよ。「本当に良いのかこの原稿で」と。しかしそれが結構良かった。僕の経験上、著者は書きますよね、読むじゃないですか。「面白いよね」という本って絶対に売れます。
出版支援やプロデュースの条件で、僕が著者さんへ最初に言っていることがあって、「書くあなたにとって面白くないかもしれないですけれど、良いですか」と聞きます。
著者が面白い本って、読者は面白くないのです。著者のレベルで面白いわけでしょう。著者レベルの人たちからは「素晴らしい」と賞賛を受けるかもしれない。学者さんタイプの本の書き方ですね。
しかし、ビジネス書はたくさんの人が読んで、特に広い層の人たちを狙っていく時に、著者が感動するような本はダメです。よほどのドキュメンタリーや感動ものなら別かもしれませんが、啓発するものや、こうした方が良いというものはですね。
THE ONEの人たちも、「最初のイントロと浅いところを5章に分けて3時間で説明してください」と言われたら、だいたいは、時間がないのでぱっぱとポイントをまとめますよね。それを本にしたほうが売れます。書き込んではダメです。
小林:本当に、出来れば私が本を1冊書く前に聞きたかった。でも「だから自分の本ってそこまで」というのが、今だから染みるのだと思います。
永松:『他力思考』もそうですけれど、『最高値』は良い本ですよ。素晴らしい本だと思います。ただ、広く売れるかというと、もともとジャンルが広いテーマではないので、そこら辺を広く作る。
「本って、書き続けられるようになった方が良いよ」と言うのはなぜかというと、書き分けが出来るようになりますから。
在り方と話9って、同じ著者が書いているとは僕自身が読んでもありえないくらいにタッチを変えています。読んで欲しい層が違いますからね。在り方は自分の人生に問題意識を持っているリーダー層。話9はおじいちゃんおばあちゃんからお孫さんまで、みたいに。
そして『20代を無難に生きる』も、ありがたいことに半年で6万部くらい行きましたが、あれは20代がターゲットです。
今は40代向けを書いていて、その次にまた25歳を書くのです。学生さんから社会人3年目までに絞り込んで、その間にステップでしておくべきことについての内容ですが、これは友達の作家をプロデュースして出します。
出版社さんからは、「自分が20代向けの本を出したのに、友達の20代向けの本も出しちゃうなんて変わった著者ですね」と言われます。
小林:今回は売れ続ける人の在り方ということで、まさにベクトルの向きであったり、自分の渾身のものを出してもひびかなかったり、読者さんのために出すというところですね。
永松:ただ、気持ちを込めなくて良いというわけではないです。コンテンツは浅く行きませんか、ただ気持ちは掛けてくださいね。そうでないと「簡単で良いんだ」という形で向き合われると、出版社さんも困りますからね。
思いは全力で、コンテンツはちょっと出しといいますか。なるべく薄めて、カルピスを原液で飲めと言ってはダメです。そう言われても飲めないです。著者はいつも原液を「はい」と置きがち。
小林:「そうじゃないと本にならない」と思ってしまうんですよね。
永松:後が続かないかもしれないという、焦りもあるかもしれないですけれど、僕は出版支援させてもらう時に、「3作目まで育ててもらえませんか」と出版社さんに結構言っているのです。
一発目はこの部数まで行かせるから、次に2作目ね、その次は3冊目というふうに、人間関係も一緒に作っていきながら。ちゃんと育てようという体制を出版社さんと一緒に作っていますし、うちの出版支援オフィスも活動は始まっていて、インフラ的動きはすでに始めています。
小林:出版はチーム戦だと改めて思いまして、今茂兄に支援指導もいただいていますが。
永松:売れるように作りますから、絶対に売りましょうね、あの本。先日第1稿が上がってきましたけれどね。
出版社や著者が出会えるコミュニティを作っていく
小林:今「これ熱いよね、苦しいよね」というフィードバックをもらっています。これから出版や著者の出会いの場を準備されているということですが、無料でも参加出来る場を準備しているということで、今後の構想を教えていただけますか。
永松:ひょっとすると変更があるかもしれませんが、まずはFacebookグループを使って、対談であったりをまず皆さんに無料で見てもらおうと思います。
ありがたいことに「出版支援オフィス」というだけあって、いつも編集者さんや著者さんが集まって、お酒を飲んでいるんです。来てくれる人たちは本当に思いがあって、本が大好きな人たちなので、すぐに対談が始まってしまうのです。
「これ撮って良いですか」「始めましょう」と始まった対談のコンテンツがバカみたいにうちにはあります。それを見てもらって、そのまま本を書いてもらえればそれで良いです。もっとサポートが必要な人たちのために、ディアボックスの中で出版講座などを夏くらいにしようかと、今動いています。
Facebookグループはまだ出来ておりません。作ってからリリースの話をしたいのですけれど、まだ出来ていませんのでClubhouseをされている方がいらしたら、永松茂久をフォローしていただけると、一旦ここに情報を集めます。
小林:そこに名だたる編集者が集まっているのですね。
永松:いつも集まっています。今はここをフォローしてもらうのが一番早いかなと思います。
小林:その時に、「自分なんて」と思わずに、ここで全員が同じベクトルを向ているわけですから、その輪の中にすっと入って。
永松:全然普通に聞いてください。「永松茂久の出版会議」というタイトルを無理やりつけてClubhouseを始めています。出版の未来を語ったり、質問も受け付けたりするので、今はClubhouseが一番アツいかなと。著者たちも結構いるので、すぐにつながりが出来ますよ。
小林:Clubhouseは、すっと輪の中に入れる人と、様子を見てしまう人とに別れると思うのですが。
永松:僕はどちらかというと様子を見るタイプです。Clubhouseを僕が始めたらみんな「茂、今度は早かったね」と言われるのですよ。いつもそういうのは「なにがClubhouseだよ」とか言っちゃって、ビビりを隠してきたタイプなのです。
小林:輪の中心にいるタイプだと思っていました。では、そちら側の人の気持ちもわかるのですね。
永松:そっちの方がわかります。
小林:その人たちは、どうやったらスッとClubhouseに入れますかね。
永松:僕はClubhouseを始めて4~5日ですが、フォロアーが3000人近くいるので正弥さんとの出版対談をやれば、また正弥さんの方にフォロアーがぶわっと集まって来ますよ。
小林:私のつながりもありますし、茂兄とのつながりもありますし。
永松:そうしていきながらやっていけば良いので。影響力は、絶対に持っているところからもらった方が良いです。
小林:自分発で売り出すのではなくて、ですね。
永松:それはまあまあ時間がかかるので。もちろん頑張った方が良いですが、影響力はもらいながらみんな大きくしていくのが良いのかなと思うので、Clubhouseでぜひフォローをしていただけると、情報は流せます。
小林:茂兄の近くにいて、私の在り方も変わったのですが、結構これまで自分1人で頑張ってしまうタイプでした。ただ自分がカラオケやテニスが好きなんですという素の自分もいるけれど、「これだけ稼いでいます」と、格好をつけて肩肘張ってしまう。
でも茂兄の中に入ると素の自分を出せて、素の自分が大事にした思いで著者の人や編集者の人などとも人としてつながれるのが独特であり、今までにないコミュニティだと思っています。この中に入ると、素の自分を出せるという感じがしますね。
永松:実は、僕の周りには極端にすごい人が多いです。そんなのでランク付けをするのは世間だったりよそでやってもらえば良いわけで。うちのコミュニティは、ざくっと、言い方が汚いかもしれませんが「いいやつかどうか」。
良い人というよりも「あいついいやつだよな」という人で集まると、本当に否定のない空間が出来上がって、否定がない空間では人間はパフォーマンスが上がるんです、みんな優しいから。
すると思ってもいないフタがパンと開いて、「実はこんな思いがあって」という話から出版が決まっていくのです。正弥さんの時も、僕は「居酒屋に来れますか」と言って正弥さんが来ましたよね。あそこで決まりましたよね。
小林:しかも正直緊張していたんです。3冊目がプレジデントさんという格調高い歴史ある、それこそ大前研一さんといったような方が出している所なので、ビビッていたのです。だから茂兄で、あそこで「乾杯」というゆるい感じで行ってもらえなかったら、ぎこちないままお見合いも上手く行っていななかったと思います。
永松:そうですね。そこは少し考えましたね。正弥さんの性格と先方の編集者さんがどちらもウェルカムというタイプではないので。
ちょっと砕けたところの方が良いなと思って、セッティングをさせてもらいましたが、いつも飲んで呼んでお見合いをして、という流れにも限界が来ている。なので、仕組化をちゃんとしようかなと思っています。
もっともっとたくさんの人に向けて、オフィシャルの場でチャンスを作る。出版を10年やってきて、そのフェーズなのかなと感じています。
小林:皆さんも、Clubhouseと近々オープンされるFacebookグループのディアブックスでつながっていただきたいと思います。
今日の学びを深めるためにも、『在り方』、『人は話し方が9割』、『影響力』を、改めてぜひ読んでみてください。今日は、ありがとうございました。
永松:ありがとうございました。