【山本憲明】1人会社を始める前に押さえておくべきポイント

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『作家・山本憲明税理士事務所』山本憲明さんとは?

【山本憲明(やまもとのりあき)さんプロフィール】

1970年兵庫県西宮市生まれ。税理士、中小企業診断士、気象予報士。
山本憲明税理士事務所代表。H&Cビジネス株式会社代表取締役。

1994年(平成6年)早稲田大学政経学部卒。
大学卒業後、大手制御機器メーカーで、半導体試験装置の営業・エンジニアと経理を経験。10年半の会社員生活ののち、2005年、山本憲明税理士事務所を設立。

現在は、少人数で効率的な経営を行いたい経営者をサポートし、その経営者がお金、時間、(家族など)人との関係の全てにバランスが取れた楽しい経営が実現できるよう、実践と勉強に励んでいる。また、「仕事を速くする」技術を発揮し、本業のかたわら、各種投資や馬主活動、少年野球指導なども行っている。

代表的著書
『「仕事が速い人」と「仕事が遅い人」の習慣』(明日香出版社)
『朝1時間勉強法』(KADOKAWA)
『社員ゼロ!会社は「1人で」経営しなさい』(明日香出版社)
その他著書多数(累計23作、51万部)

【HP】
山本憲明税理士事務所

【著書】
「仕事が速い人」と「仕事が遅い人」の習慣
朝1時間勉強法
社員ゼロ! 会社は「1人」で経営しなさい
社員ゼロ! きちんと稼げる「1人会社」のはじめ方
働きながら3年で!税理士最短合格の時間術・勉強術


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小林:こんにちは。小林正弥です。今回は『きちんと稼げる1人会社のはじめ方』の著者で、累計50万部のベストセラー作家である、山本憲明さんにお話しを伺っていきます。山本さん、よろしくお願いします。

山本:よろしくお願いします。

小林:山本さんは非常に肩書がユニークというか、資格だけでもどんなものをお持ちだったでしょうか。

山本:資格は税理士、それから中小企業診断士、そしてこれはあまり利用していないですが気象予報士などです。

小林:気象予報士は取るのがすごく難しいのですよね。合格率は何パーセントぐらいですか?

山本:私が受けた時は4パーセントぐらいでした。

小林:今まで累計何冊、本を書かれているのですか?

山本:23冊になると思います。

小林:今回「1人会社の始め方」というテーマですけれども、これの前の本もすごいベストセラーになっていますよね。

山本:そうですね。いくつか前なのですが、『「仕事が速い人」と「仕事が遅い人」の習慣』というのが15万部ぐらい、その後に出した、これの1つ前の『会社は「1人」で経営しなさい』という本が6万部ですかね。

小林:自己啓発や健康をテーマにした本でベストセラーというのは結構多いと思うのですが、社長やビジネスパーソン向けで、しかも1冊だけではなく、コンスタントに5万部クラスの本を出されているというのはあまり聞いたことがないので、その辺りも少し伺っていきたいと思います。

山本:たまたまだと思うのですけれどね。

小林:よろしくお願いします。

山本:はい、よろしくお願いします。

個人ビジネスの時代が到来

小林:今回、1人会社の始め方ということで、こちらの本はぜひ皆さんに読んでいただきたいと思うのですが、今1人会社、1人でビジネスをするという時代がやってきた、というお話しが冒頭であったと思います。今どんな時代に向けて変わっていっているのか、というところから伺ってよろしいですか?

山本:日本全体で見ると、間違いなくこれから人口が減っていくではないですか。そして若い人の人口が減っていきます。たくさん消費をする世代の人口がどんどん減っていくということで、これから経済規模自体は必ず小さくなっていくと思うのです。

今は普通にサラリーマンというか、会社員として大きな会社で勤めるということが普通なのですが、そういう全体の経済規模が小さくなっていくと、今働いているすべての人がそのまま会社員として働くのが難しくなる時代になると思います。

消費も少なくなっていくので、今会社で働いているような人たちが、副業などから始めるかもしれないですが、1人で起業していく。

個人商店やネットでも、動画などもすごく盛んになってきましたし、これからは更にネットでも稼げるような時代になっていきますから、そういうことをやっていく人が増えていくと思うのです。

昔はほとんどの人が個人で、農家とか商店とかをやっていたのですが、それが今は大きい会社の時代になりました。また経済規模が小さくなっていくにつれて、1人の時代というか、個の時代が来るのではないかと思っています。

小林:なるほど。やはり皆さんにとってお父さんとか、場合によってはおじいちゃんおばあちゃんがやっていたような個人商店、個人ビジネスの時代に回帰していくわけですね。

山本:少し違う形になるとは思うのです。ネットなどであれば店を開かなくても1人で出来るので、そういうふうになっていくと思います。もう今もどんどんなっていますけれどね。

小林:それが加速していくということですよね。

山本:そうですね。

小林:私はこの『億を稼ぐ勉強法』という本を出しているのですが、視聴している方の代わりに勉強するという体で、質問をいろいろさせていただきたいと思います。まず1人会社というところが、多分ほとんどの人がそれをやらざるを得ない環境になっていっていると思います。

1人会社でやってはいけない固定費のこと

大きい会社に勤めていた人というのは経験がないと思うのですが、1人会社でやってはいけないこと、というのをまず教えていただけますか?

山本:そうですね、まずは初めから固定費といって、毎月かかるような経費、代表的なものが家賃や人件費なのですが、そういうものを大きくかけてしまうことです。

小林:それはなぜダメなのでしょうか?

山本:売上が上がってずっと増えていけばいいのですが、なかなか難しいと思うので、初めから固定費をかけない方が利益が出るのではないかと思うのです。

例えば人を雇うこと。人を雇うのが一番リスクが大きいと思うのですが、人を雇うとまず場所が必要になります。

その場所を借りるためには、例えば保証金などのお金が必要になります。都内に事務所などを借りると、保証金が初めに10ヶ月分ぐらい必要になりますが、そういうものがかかってしまいます。

コストが必要になるとお金を借りなければいけない、という話にもなります。そうするとまたお金を借りた時の利息がかかって、その利息を稼ぐためにまた人が必要で、というような形でどんどん売上を大きくしていかなければいけなくなります。

つまり、固定費を大きくすると売上を増やさなければいけません。しかし、これから全体の規模自体は小さくなっていきますし、競争も激しくなっていくはずなので、そんなに順調に売上が増えるとは限らないです。

ですから、初めは本当に固定費をかけないで小さくやっていく方が良いと思うのです。

1人会社はオフィスを持たずに始めてもいい

小林:固定費をむやみに上げないということですね。人を雇うと場所を持つ必要がある。場所を持つにはまた初期費用も継続的な費用も発生していく。では人とオフィスを持たずに始める、というようなことでしょうか?

山本:そうですね、それが今の時代にも合っていると思います。「たくさんの人を抱えてワイワイやっていきたい」人や、「規模を本当に大きくして上場を目指す」というような人は、それはそれでやればいいと思うのです。

しかしあまり得意ではない人もたくさんいると思いますし、私もそうなのですが、1人でやっているのが好きだという人も多いと思うのです。そういう人は、初めは地味に自宅で始めるということでいいのではないかと思います。

小林:確かに私の友人でも、何となく上場がいい、という外からの情報で大きな会社を目指していったのですけれど、途中でいろいろとトラブルがあり、今は1人会社をやっている方がいます。

お子さんが生まれたことを1つのきっかけに、「こんなことをやっているけれど、どこを目指していたのだろうか」と1人会社に戻って来た友人もいました。

山本:そうですね、例えば本当に上場まで行けばお金も手に入るし、いろいろなものが手に入ることは確かだと思うのです。しかしそうではない生き方もあるかと思います。

私は少し地味な、というと印象が良くないですが、あまり大きくしていったり、ワイワイやっていったり、目立ったりするのが得意ではない人は、1人会社をやればいいのではないかといつも思っています。

1人会社の成功する人、失敗してしまう人

小林:山本さん、ありがとうございます。では次に、1人会社をいよいよ始めるぞ、という段階になります。山本さんはもう15年以上いろんな社長さんを税理士という側面からも見て来られたし、ご自身もずっと会社を経営されているわけですけれども、その山本さんから見て、どういう人がうまくいくのでしょうか?

山本:少し大きな話になりますけれども、自分の人生をどうするか、ということをまず考えて、それに沿って数字や規模、そしてやり方などを決めていく人の方がうまくいくと思うのです。

小林:それはある意味ライフプランニングのようなものですね。どれぐらいお金がかかるかなど。

山本:そうですね、それも含めています。例えばお子さんがいる方といない方では全然違ったりしますし、独身であるかどうかでも違うと思います。そういう家族構成も1つです。

あと「自分は億万長者になりたい」「1億ぐらい欲しい」というビジョンや、全然お金などではなく「自由な時間があればいい」など、自分の価値観をよく検討してまずは決めてもらいたいと思うのです。

それが決まればそれに沿って、どれぐらいの時間を1人会社にかけるのか、どれぐらいの利益を得たいかなど、利益や時間を計算すると、最終的に売上をいくら上げればいいかという話につながってくると思うのです。

私の場合はいつも言っているのが、「何歳まで生きて何歳まで仕事をする」というライフプランニングのようなことを先に決めて、その仕事を辞める時に貯めておくべきお金を決めてもらいます。

そしてそこから毎年どれぐらい貯めていけばいいか、貯めるためには利益がいくら必要で、その利益を上げるためにはどれぐらいの売上が必要か。このようなことを逆算していって計画を立てる、そういうことをお勧めしています。

これを出来る人がうまくいくはずです。実際に私のお客さんでも、生き方のようなものを定義して、そこからやり方を決めている人がうまくいっています。

【成功事例1】定年なし、悠々自適な1人葬儀屋さん

小林:山本さんが今まで顧問をされてきたり、見てきたりした中で、1人会社でうまくいっている事例というものをいくつか教えていただけますか?

山本:うまくいっているというのは、一般的にはすごく儲かって、利益がいくらで、ということだと思います。

見ている方もいろいろ価値観はそれぞれあると思うのですが、私の価値観としては、時間がたくさんあって自分でいろんなものを作っていけるようなことが好きなので、それを大事にしています。そういうものを実現している人はいますね。

その代表的な例というのは、そんなに売上はないのですが、事業でいうと、例えば葬儀屋さんです。

小林:こちらの本に書いてありましたね。

山本:はい、書きました。葬儀屋さんで、本当に売上はそんなにないのですけれども。

小林:1人葬儀屋さんですよね。

山本:そうですね。営業をたまにしていて、そういう話が入るとそこから会場を借りたり、人を手配したりなどしてやっています。

家賃は3万円とかそれぐらいの所に事務所があって、そこで1人でいらっしゃいます。普段は本当に何もしていなくて、仕事が入れば動くのです。ただ、仕事が入ったら割と大きなものが入るので、利益も出るという状態です。

小林:何百万かにはなるのですね。ちなみにその1人葬儀屋さんというのはおいくつぐらいの方なのですか?

山本:私よりまあまあ年上で、60歳ぐらいだと思います。

小林:普通でいったら、定年退職されて引退するところを。

山本:全然お元気ですし、定年などという概念もないですし、多分あと10年、いや、もっと行けると思います。私の父親も一応小さな規模の会社を経営しています。今80歳弱なのですが、まだまだ元気です。

小林:現役、なるほど。

山本:元気であれば何歳でも出来ます。

案件獲得に繋がる近所付き合いの大切さ

小林:ちなみにその1人葬儀屋さんはどうやってお客さんを集めているのですか?

山本:病院に営業に行ったり、お寺さんに営業に行ったりしています。ただ、営業は毎日行っているような感じでもなくて、たまにしか行っていないと思います。葬儀屋さんが決まっていない人が病院やお寺さんなどに相談して、そこから話が来るそうです。

小林:紹介してもらうという形ですね。ある意味近所付き合いをしている中で定期的に何百万という案件がぽつぽつと入ってくるということですね。

山本:そうですね。本当に全然入って来ない時もあります。私も仕事が入った時にしか呼ばれないのですが、仕事が入るとお金もいただけます。そんな感じで、そんなに売上がなくても大丈夫です。つぶれることはないと思います。

小林:年金もあるでしょうしね。

山本:そうですね、年金はまだもらっていないのかな。これからですね。

【成功事例2】1人出版プロデューススクール

小林:あと、ほかにはどんな1人社長さんの例がありますか?

山本:あとは出版プロデュースをしているような、著者を発掘・養成するスクールをやっているお客さんがいます。その人は本当に誰も雇っていなくて1人会社です。少し手伝ってもらっているような外注先はありますが、ほぼ1人でやっています。

各出版社の編集者の人がそのスクールの最終オーディションに来られて、出版社の人が「この人の本を出したい」となれば交渉する形になります。そのスクールの料金ももらうし、出版が実現した時の印税の何パーセントかをもらったりしているので、かなり安定している印象です。

小林:なるほど、そういう確実な受講料もあるし、印税というのはある意味、宝くじと言ったら言葉が良くないのですが、伸びしろがありますよね。

山本:本当にそうです。そして著者が生まれると、その著者が何冊も出すようにその後もフォローしていきます。そうするとまた印税が増えていくというような感じです。

小林:なるほど、では結構1人でもお稼ぎになっている感じですね。

山本:稼いでいますね。守秘義務があるのであまり言えないですけれども。

一人会社の人にとって心身の健康は不可欠

小林:そうやってうまくいっている人たちは、仕事以外にも多分、それぞれ趣味などもいろいろあると思うのですが、どんなライフスタイルなのでしょうか?

山本:人それぞれですけれども、うまくいっている人は基本的には時間が結構ありますよね。朝早めに起きて家族と食事をしたり、あとは走ったりなどしている人がほとんどです。夜もそんなに遅くまでは仕事をしないで家に帰って家族と一緒に過ごす、という人が多いです。

小林:この本の中でも健康を大事にして、長く続けられるというお話しがありましたけれども。

山本:健康は本当に大事だと思います。やはり、定年もないですし、ガツガツ稼がなくてもずっと長く稼いでいけば、そんなにお金をためる必要もないですよね。例えば80歳ぐらいまで仕事が出来れば、100年生きるとしても残り20年分を確保していればいいので。年金もあるでしょうし、そこまでガツガツやらなくてもいい。

ということは健康で、ずっと働けるとそんなに稼がなくてもいいという形になります。だから健康はすごく大事だと思います。

小林:やはりそういう1人社長さん、1人会社でうまくいっている方たちもやはり心身の健康というものを結構ご自身でケアされているのですね。

山本:そうですね、本当に元気な人が多いですし、睡眠もよくとっている人がほとんどです。

競馬の馬主資格で楽しみながら投資

小林:山本さんご自身も1人会社を経営されていると思うのですが、何か馬主もやっているというお話しを聞いたのですが。

山本:はい。もともと競馬が大好きで、ずっと競馬をやっていたのですが、10年前ぐらいに地方競馬の馬主の資格を取りました。

小林:資格があるのですね。

山本:ありますね。中央競馬と地方競馬とあって、土日にやっているのが中央競馬です。そちらの方はすごくハードルが高くて、資産の額や年収がいくらなどあるので、なかなかそこまでは取れないです。

地方競馬だとそんなに制限が高くないので、地方競馬の資格を取って、何人かで馬をシェアしたりします。北海道の競り市に行って馬を買ってきたりなどして楽しんでいます。

小林:ちなみに1頭おいくらぐらいするのですか?

山本:1頭は本当にピンキリです。何億という馬もいるし。最高で6億とかそういう馬もいます。私が買うのは100万、200万です。

小林:それでも結構……。

山本:そうですね。でも賞金を稼げばペイ出来る可能性が結構高いです。

小林:今までで一番賞金を稼いだご自身の馬というのはどんな感じだったのですか。

山本:3人でシェアしていて、私が半分持っていたのです。200万で購入して賞金としては3,000万以上稼いだ馬がいました。

小林:すごいですね。やはり自分の馬が出る場合、見に行くのですか?

山本:全部行きますね。

小林:それは相当楽しいですよね。人の馬に賭けるのか。当然自分でも賭けますよね?

山本:そうですね、その馬は人気がない時に結構活躍していたので、その馬が走ってくれると馬券でも儲かったりしていましたね。

小林:馬主の席のようなものはあるのですか?

山本:あります。結構豪華な。

小林:VIPしか入れないというような。

山本:そうですね、ありますよ。

道楽に見えることでもやり方次第でプラスに

小林:話が少しずれてしまうのですが、馬主というのはある意味趣味と実益を兼ねた投資的な感じですか?

山本:馬主は道楽と言われますけれども、私の場合は馬主でもプラスになるように何とかしようとしてやってきました。

小林:では最初に馬を買う時には数百万から買えるということですが、そのランニングコストというのはどれぐらいかかりますか。

山本:それが結構かかるのです。大体月15万以上、地方競馬の場合は40万ぐらいまでの間に入る感じですかね。

小林:その馬のケアや食事などというのは全部委託する。

山本:そうです、全部委託します。

小林:どうですか、その馬主の会みたいなものというのは、多分相当独特な。言ってみれば、ある程度お金と時間の余裕がある人しかいないですか?

山本:そうですね、時間に余裕のある人というか、お金持ちがほとんどです。例えば北海道で夏に競り市といって馬がたくさん出てきて、それを100万、200万などで手を上げて買うようなものがあります。

それはよく行くのですが、そこには本当にいろんな人がいて、すごい大金持ちの人もいるし、馬をたくさん持っている人もいます。競りの種類にもよりますが、牧場の人などがいて、なかなか面白いです。有名な人も結構来たりとかします。

小林:芸能人などですか。

山本:芸能人が来たりする競り市もあります。

役員報酬決定のキーワードは4:4:2

小林:そうなのですね。なるほど。それも詳しく聞きたいところですけれど、時間の関係で次に行きます。

そういう1人会社でいろんな成功事例というのを教えていただいたのですが、次は1人会社を始めるとなった時に、私も含めて必ずみんな聞かれるのが「給料はいくらにしたらいいのか」「給料を上げるタイミング」など、給料の決め方ですね。これは何か考え方を教えていただけますか?

山本:そうですね、これも法律がどんどん変わってくるのでそれにもよるし、いろんな考え方にもよるのですが、私の場合は初めの方で触れたかもしれないのですが、まずはライフスタイルを決めてもらって、必要な金額を決めて、その後でそこから利益をどれぐらい得なければいけないかを決める。

そしてその利益を得るためには給料はこれぐらいでないといけないなど、そういうものがあります。そうやって逆算して決めることが多いです。

あとは売上から、その売上に必ず必要な経費、原価というのですが、原価を引いたものが粗利と言います。これが例えば200万の商品を仕入れてそれを1,000万で売れたら原価が200万、売上が1,000万、粗利というのが800万ではないですか。その粗利の40%ぐらいまでは給料で取ってもいいと、そういう目安です。

小林:なるほど。では粗利で800万円ぐらいだったら320万などですか?

山本:そうですね、あまり多くないですけれども、そんな感じですかね。それだと利益がわりと確保出来ます。粗利の40%が給料で、また別で40%がかかる経費とすると2割は、20%は利益が出るので、そういうやり方がいいかと思います。

小林:なるほど。では自分の役員報酬が粗利の4割、経費が4割で、営業利益で2割残す。

山本:そうです。4:4:2の法則という、この本でも書いているのですけれど、経費がそんなにかからなければ給料を5にして経費が3で、3:5:2のような、サッカーのフォーメーション的なそういうのでもいいと思います。

山本:馬主は道楽と言われますけれども、私の場合は馬主でもプラスになるように何とかしようとしてやってきました。

役員報酬は取りすぎず、未来の自分のために会社に残す

小林:ではまず、いずれにしても家計と会計を連動させて考えるということですね?

山本:そうですね、まずはそこで、そこから売上をどれぐらいにしようか、というのを出した方がやりやすいと思うのです。そうするとどういうふうに行動していけばいいかや、どれぐらいの時間をかければいいか、お金や広告などもどれぐらいかければいいなども決まると思います。

そして売上が決まったらそこからその40%とか50%とかを給料でもらう。そして利益は必ず出すというように。税金を引いた後の利益も、100%株主で1人でやっているような会社であれば、税金はかかりますけれども後で自分のものになるので、仕事を辞めた後に積み上げた利益から給料をもらってもいいし、退職金をもらってもいいしという、そんな感じになります。

ですから実質、将来のために利益を残しておく。そして今必要なものを給料にするという考え方でいいのではないかと思います。

小林:なるほど。1人会社の場合はお金は基本的に、税率にもよりますけれど所得税と法人税だったら法人税の方が率が今は低い。

山本:そうです。今すごく低いので。

小林:では、役員報酬はあまり取りすぎずに、やはり会社に残しておくという発想ですか?

山本:そうですね。給料も、1,000万とかを超えてしまうと給料から無条件に引いてくれる給与所得控除というものがあるのですが、それが制限されてしまって頭打ちになってしまうので、あまり1,200万とか2,000万とか、そういう報酬を取らない方がいいですね。

率も、先ほどおっしゃったように法人税の率がどんどん下がって来て、所得税はあまり変わらないという形なので、法人に利益を残しておいた方が今の時代は、法律的にはいいのではないかと思っています。

利益は「人やオフィスに投資しない」と決める

小林:あと、この本の中で、1年間の期が閉まって残った利益というお金を事業にさらに投資するということだけではなく、お金はお金で少し別枠で安定的に、数パーセントで増やしていくというお話もありましたけれど、そこも少し教えていただけますか?

山本:利益が出て、その出た利益を次の期に機械を買ったり、人を雇ったりなどして増やしていくのが普通の経営なのですが、それをやらないと決めるのが1人会社なので。

小林:考えてやらないことを決めておかないと、結構やってしまいますよね。

山本:そうです。ですから利益がどうしてもずっと残ったままになるのですよね。それを運用していく。会社のままで投資してもいいのですけれども、税金もかかったりするので、それをあまり良くないのですけれど、社長が借りるような形で個人で投資していってもいいと思います。

私がお勧めしているのは、世界全体の株の指数などに連動するような投資信託を買って、それだと世界の人口はまだまだ、あと20年ぐらいはどんどん増えていくので、20年後には貯まっているだろうという考え方です。

利益は「株式に連動した投資信託」で安定的に運用を

小林:わかりやすいですよね。山本さんの本にも書かれていましたけれど、消費のボリュームゾーンの人口と経済というのは比例すると。

山本:おおむね連動しています。

小林:ということは、日本の株式だけで考えてしまうと、日本の人口はもう統計上下がるから、日本の株式だけではなく、グローバルの、全体の株式に対して連動する投資信託だったらむこう20年ぐらいは伸びるだろうと。これは非常に未来予測としては堅いですよね。

山本:それぐらいしか予測出来ないというか、人口はある程度高い確度で予想出来るので、その人口を頼りにしたような考え方ですかね。

小林:投資のことなどに詳しくない方のために少しまとめると、会社の利益、売上があって粗利があって、売上が1,000万で粗利が800万で、そのうちの4割を役員報酬、320万円ぐらい。そしてまた320万円を経費、そして残りの2割の160万円に税金がかかって、残ったお金は人を雇ったり、かっこいいオフィスなどにお金を使うのではなく、グローバルの株式に連動した投資信託で安定的に運用しましょうということですね。

山本:それがいいのではないかと思います。

小林:これはお金の流れとして非常にわかりやすいですね。家計と会計と投資信託でお金を増やすという、この一連の流れですね。

山本:そうですよね。その320万の給料も、本にも書いているのですが3分割して。都会で家族がいる場合は320万では少し難しいかもしれないですけれど、仮の数字で言います。

320万を3分割すると約100万ずつではないですか。生活費と税金、社会保険料などです。そして残り200万を将来のために個人でもやっていく、投資信託などを買って投資していくというのがベストではありますよね。

小林:なるほど。これはすごく具体的な質問になってしまうのですが、投資信託は会社の方でやるパターンと、個人の名義でやるパターンとあるではないですか。どちらがオススメなのですか?

山本:今積み立てNISAなども個人に対して投資を促すような政策もたくさんあるので、税金などを考えると本当は個人の方が有利なのです。

小林:控除があると。

山本:ですから会社でやってもいいのですけれども、会社のお金を一部投資という形で自分に貸し付けて。利息は払わないといけないですけれども、個人で運用するという形でもいいと思います。

小林:わかりました。

山本:どちらかというと個人でやった方がいいです。

「先生に丸投げ」でお金の流れを学ばない人は成功しない

小林:例えば「あなたの場合はこれぐらいの役員報酬を取りましょう。そしてこういう感じで会社の売上から最終的な税引き後の利益までをこういう感じで作って、残りを投資信託で運用しましょう」という、この辺のスキームというのは山本さんに顧問になっていただいたら、そういうアドバイスをいただけますよね。

山本:アドバイスはします。ただ、個人の考え方はさまざまなので、その人が希望するような形がもちろん基本ではあります。

聞かれたら「そうした方がいいのではないか」とアドバイスして、実際にやった人もいまして、そういう人もお金が結構増えているので、すごく感謝はされています。

小林:私の意見なのですが、やはり社長さんというか、1人会社の人は自分の本業に専念した方がいいと思っています。

その辺のお金の流れとか仕組みというのは、例えば山本さんとかそういうプロの人に最初からまるっと相談して、仕組みを作って仕事に集中してしまった方がいいのかなと。今の話を自分で全部やるのは少し大変ではないですか?

山本:ただ、ある程度は知っておいた方がいいし、そういう所に無頓着な人は結構うまくいかない人が多いような気がしています。

小林:先生に丸投げするだけではダメよ、ということですね。

山本:傾向からするとそうですね。

小林:わかりました。

山本:私のお付き合いしている人の中では、そういうものに興味があって、やろうとする人の方がうまくいっていますね。

会社にして公私を分ければ金銭管理は楽

小林:分かりました。では、次の質問に行きたいと思います。いざ、今までの流れでやってはいけないこと、押さえておくべきこと、そして家計と会計と、あとは投資信託のお金を増やすという、一連の流れまでは分かりました。

ではスタートする時に、これもよく聞かれるのですが、個人事業主で始めた方がいいのか、株式会社化した方がいいのか。今合同会社とかいろいろな形態があるではないですか。一般社団法人もありますよね。その辺の会社の形というのはどういうふうに始めるのがいいですか?

山本:そうですね。本当はそんなに大きな問題ではないとは思っているのですが、会社にした方がいいのではないかと思っています。

それはなぜかと言いますと、個人事業の場合は、例えば売上が入ってくる口座なども個人の口座ですし、一応屋号を付けることは出来るはずなのですが、個人の口座なのでそこから生活費などを降ろす時も、給料という名目ではなくて、ただ降ろしているだけになるのです。

そうすると数字の管理というか、どれぐらい降ろせばいいのかなど、そういうものがあいまいになってくる場合もありますし、結構いい加減になってしまう場合が多いのです。

ですから、きちんと給料を決めて、会社にして、その会社から給料をもらうような形にした方が口座も別で管理がしやすいし、うまくいくのではないかと思っています。

公私を分けるというか、会社を公にして自分との区別をつける方がいいと思うのです。

小林:確かに、私も個人事業主の時代が1年ぐらいあって、今から10年前ぐらいに株式会社に変えました。個人事業主の時は、家計と会計が割とごっちゃになってしまうというか。

当時自分でやっていたので、税理士の先生にしっかり見てもらっていないので、自分のいい加減さが経営にすごく反映されてしまって、結局お金が残らないなというのはありました。

ですから、確かに最初から株式会社は、もし私が10年前から起業をやり直すとしたら、私も最初から株式会社化するなというところです。

あと、合同会社というものがありますけれど、これはどういうものなのですか?

初期費用が安い合同会社、信用度が高い株式会社

山本:合同会社は名前が違うだけで、ほぼ株式会社と変わらないです。初期費用が安くなります。大体株式会社だと税金や依頼する費用なども合わせて30万ほどかかるのですが、合同会社だと10万強で出来てしまいます。税金が安いのですよね。

小林:税金というのは、立ち上げる時の。

山本:立ち上げの時の登録免許税です。

小林:別に法人税などは変わらないですよね。

山本:そうです、変わらないです。ですから、合同会社でもいいとは思います。ただ、例えば銀行からお金を借りやすくする場合。あとは対外的な、お客さんに対しての印象なども、合同会社というのは認知されていなくてあまりよく分からない、というふうに見られる可能性があるで、出来れば株式会社にするのがいいのではないかと思うのです。

あとは会社にした方がいい理由というのは、社会保険なども会社にすると強制的に入らないといけなくなります。

日本の年金などがどうなるかというのはまだわからないですけれど、ある程度は残るだろうということで、そういうものにも入っておけばいいのではないかと思うので、個人よりも株式会社にした方が、いろんな面でいいとは思います。

小林:わかりました、きちんと経営も出来るし、保証もあるということですかね。

山本:本当に公私を分けるというのが一番大きな要素だと思います。

1人会社の良さを広めることで、誰かのヒントになれば

小林:わかりました。最後に今このすごく売れている『社員ゼロ! きちんと稼げる「1人会社」のはじめ方』ですが、どういう思いで書かれたのかというのを最後に聞かせていただけますか。

山本:私自身が小さい規模で経営を永続的に、死ぬまでやっていきたいという思いがあって、それをいろんな人に広めたい、いろんな人にヒントとして得てほしいという思いがあります。

私の周りでもどんどん出てきているのですけれども、会社を辞めざるを得なかった人がいます。私の昔の会社でも希望退職を募って、「自主的に辞めてください」的なことを言われた人が同期でも何人もいるのです。

そういう人たちがこれからどうしたらいいのか、というのをこの本を読んでいただいて、少しでもヒントになればいいと思って書きました。そういう境遇に置かれている人とかがいらっしゃったら読んでいただいて、少しでもヒントにはなると思います。

小林:かなり具体的に。これとあと1つ前の本とセットで読んでいただけるとすごくいいかと思います。

山本:いろんなことを書いているので、そのうちの1つでも使っていただければ、絶対に役に立つとは思います。

小林:特に、結構大きな会社に勤めていた人はその考え方で人を増やす、会社のためにいいオフィスを借りるなどという大企業のパラダイムにいる人は、特にこれを読んでからスタートするがはすごく安全だと思いました。

山本:そうですね。これを始めて大きくしていくこともできると思いますし、いろんな選択肢があるので、読むことに損はないと思います。

小林:ありがとうございます。それでは今回は、この「1人会社の始め方」を書かれた著者で、税理士、そして気象予報士、中小企業診断士で馬主でもあるベストセラー作家の山本憲明さんにお話しを伺っていきました。どうもありがとうございました。

山本:ありがとうございました。

【HP】
山本憲明税理士事務所

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