【北村 貴明】時間と場所に縛られず、専門性を売って稼ぐ人になる

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2018年11月7日、『クールワーカーズ』著者の北村貴明さんと、『自分を最高値で売る方法』著者の小林正弥とのトークセッションが行われました。時間と場所に縛られず、専門性を売って稼ぐ人になる具体的なノウハウをお伝えします。どうぞ対談をお楽しみください。


【北村貴明さんプロフィール】

Ascent Business Consulting株式会社代表取締役。
関西学院大学を卒業後、大手シンクタンクのコンサルタントを経て、2012年にAscent Business Consulting株式会社を創業。外資コンサル時代には、常にトップクラスの成績をおさめ、年間優秀プロジェクト賞など、多数の賞を受賞。コンサルティング事業を主事業とし、現在ではフリーランスコンサルタントのマッチングサービスである業界特化型クラウドソーシング、コワーキングスペースBasis Point運営、ウェブメディアの運営、自由な働き方を実現するために必要な複数の事業を展開。

【コワーキングスペース Basis Point】
出会う、つながる、自由にはたらく。
https://basispoint.tokyo/

【著書】クールワーカーズ『時間と場所に縛られず、専門性を売って稼ぐ人になる』


司会 : 北村貴明氏執筆の書籍『クールワーカーズ』出版記念トークセッションを開始させていただきます。皆さん、よろしくお願いいたします。私はコワーキングスペース、Basis Pointを運営しておりますマネージャーの増村と申します。

昨今、働き方改革という言葉をはじめ、世間の働き方に対する関心は、日々深まっております。社会情勢も日々変化しておりまして、時代の中ではまさに変換点といっても過言ではありません。本日は、時を同じくして“働き方”という観点で書籍を執筆され、今なお現場の最前線で活躍されてらっしゃる経営者2名にご登壇いただきまして、セッションを開催いたします。

「クールワーカーズ」著者の北村貴明さんとは?

司会 : それでは、お二人のご紹介をさせていただきます。
まず北村貴明氏。
Ascent Business Consulting株式会社代表取締役。
コンサルティング業界で、外資系で10数年経験を積み、2012年、Ascent Business Consulting株式会社を創業。外資コンサル時代には、常にトップクラスの成績をおさめ、年間優秀プロジェクト賞など、多数の賞を受賞。現在ではコンサルティング事業に加え、フリーランスコンサルタントのマッチングサービスである業界特化型クラウドソーシング、コワーキングスペースやウェブメディアの運営など、自由な働き方を実現するために必要な複数の事業を展開しています。この度、書籍『クールワーカーズ』を執筆されました。

続きまして小林正弥氏。
株式会社教育スクールビジネス研究所代表取締役でいらっしゃいます。
1983年、埼玉県生まれ。2006年、早稲田大学理工学部。25歳で独立したものの、全く稼げず時給900円の日雇いバイトを経験。自分を最高値で売ることを決意し、1カ月後に毎月210万円の報酬を得られるようになり、その後自分を商品にして1億円プレイヤーとなり、今回起業10年の経験を本にまとめられました。年間3000万円、1億円稼ぐクライアントもいらっしゃいます。自分がお金に苦労した経験から、地に足のついたアドバイスに定評があります。書籍『自分を最高値で売る方法』を執筆されました。

本日は今の時代背景を含め、今私たちが何を考え、何を行動すべきかをひも解きます。多くの気付きを得られるのではないでしょうか。では、よろしくお願いいたします。

二人の著書のシンクロ

北村 : 今ご紹介いただいた北村です。最初にパワーポイントのこの資料見ていただきたいです。小林正弥さんにご用意いただきましたが、これツタヤですよね。

小林 : そうです。中目黒店ですね。

北村 : 本が背表紙じゃなくて表面が見える置き方をされるのは、結構売れている本だけですけど、これが同じような位置に、小林さんの本と私の本がちょうど並んでいます。これを写真に撮っていただきました。ありがたいことに、このぐらい今この本が注目されているということですね。この2名で今日はトークセッションをし、皆さんにいろいろお伝えしていければなという風に思っています。先程、小林正弥さんのご紹介をいただきましたが、もうちょっと細かい内容をご自身のほうからお願いしたいと思います。

好きなラーメンを仕事にして挫折

小林 : 改めまして小林正弥と申します。今日は2時間ほど皆さまの貴重なお時間を頂戴しますので、お役に立てるようなお話をしっかりと届けられたらなと思います。北村さんや北村さんの会社がやっていることは、これからのフリーランスや副業という新しい働き方のプラットフォームというか、本当に時代の先を見据えて一人一人が活躍できる、そういった働くプラットフォームをつくられているということで、素晴らしいなという印象を持っております。

僕は、自分自身が率直なところお金にすごく困りまして。ちょうど震災があったくらいの時期に、2社と業務委託の契約を結んでいましたが、震災の数日後に契約が一方的に終了になり、その2社に完全に依存していたので、お先真っ暗みたいな状況でした。新規開拓もさぼっていましたので、どうにもならなくなって不安ばかり募って、何か動かなきゃと思いました。

当時“好きなことやろう”というメッセージも、世の中にだんだん出てきたタイミングだったので、結構本気で考えたのですが、「自分が好きなことは何かな?」と思ったときに、ラーメンと寿司が好きだなと思い(笑)、寿司はなかなか募集がないので、じゃあラーメンからちょっとやってみようということで、割と楽観的に当時時給900円の日雇いのバイトをやり始めました。それが28歳の時で、一番僕が最安値だったときですね。でも、そのタイミングで家族に病気がありまして。どうしても医療費を稼がなきゃいけないというところで、お尻に火が付きはじめました。

HOWはわからなくても目標を決める!

小林 : 当時家族に、なんとか3カ月で毎月100万円お金を入れるから、治療に専念してくれということを話しました。言ったものの、どうやってお金を稼いだらいいのかという、さっぱりそのHowの部分は分からなかったのですが、それを3カ月で稼ぐということだけは決めたんですよね。そこからいろんな活躍している方にお聞きして、自分自身を一つの商品と見立てて、企業や個人の人に高値で買ってもらうということをやり始めて、なんとか治療代を捻出することができました。

その経験を、一生懸命長時間働いているのだけれども結局手残りがないというような、いわゆる生産性が低い仕事をやっている友人・知人に、どうやって自分を高く売ったらいいのかやり方を教えてほしいと言われ、こういった『自分を最高値で売る方法』というものを書かせていただきました。

これは2018年の今年の8月に、ちょうど北村さんの『クールワーカーズ』と同じぐらいのタイミングで出させていただきました。『クールワーカーズ』はすごいクールな感じですが、こっちはもう「買ってくれ」という感じの全面ピンク色で(笑)でも、おかげさまで毎月重版かけていただいて、時代に求められているのかなとは思います。

本のタイトルに見合う自分にするために

小林 : こういう本を出そうとなって、去年の年末ぐらいに企画が通ったのですが、その時はちょっとヤバいなと思いまして。だってこんなタイトルで出したら、「お前はどれぐらい高いんだ」とAmazonのレビューに書かれる。でも逆に、これはいい機会だなと思って。

個人で最高値というと、例えば野球選手が「1億円プレイヤー」などと言いますよね。一方僕はゼロから事業をつくって、自分という商品で1億つくるという本を出すと同時に決めて。実はちょうど先月末ぐらいで、僕の新しい講座の売り上げも1億円に到達したので、一応「1億円プレイヤー」となれたわけです。顧問とか、講座とか、講演とか、それから印税もそんなにたくさんいただいてるわけではないですが、そういうのをひっくるめて、会社の営業利益や僕の役員報酬などを併せると1億円ぐらいいただけるように、本当にわずか数年でなれました。

働く場所も、チャットやslackみたいなクラウドをベースに、いろんな専門家の人たちと組んでやっていますので、お互いにどこにいるのかというのはあまり関係ない状態で。まさに北村さんの書籍であり今日のテーマである、“時間と場所に縛られずに専門性を売って稼いでいく”ということが、ようやくできるようになったかなと思います。

北村さんはもっと世の中をどう変えていくのかという大きな視点から、事業を組織的につくられてらっしゃると思いますし、僕はどっちかというと、すごくいいチームで小規模でやってはいますが、個人がどのような具体的なテクニックだったりとか、個人がどう時間と場所に縛られずに収入を上げていけるのかというのを、自分の実体験の中からお話できるのかなと思います。よろしくお願いします。

1人が自分のスキルを複数の企業に提供する働き方

北村 : ありがとうございます。今小林さんのほうから、“時間と場所に縛られず専門性を売って稼ぐ”というキーワードや、そのプラットフォームなど、いくつかお話しいただきましたが、『クールワーカーズ』の中に書かれている内容を、私のほうから5分ぐらい皆さんに、復習の意味を兼ねて解説したいと思います。

これは私が説明でよく使うグラフです。皆さんもうご存じだと思いますが、日本は少子高齢化で人口減と言われていますが、実は人口はまだそんなに減っていません。人口が今1億2000万人と言われていますが、1億1000万人になったということは、誰も聞いたことないですよね。実は人口は、ここ30年ぐらいずっと1億2000万人です。最近、いいのか悪いのか分からないですけど減り始めましたが、それでもまだ1億2000万人近くの人口がいます。

ところがめちゃくちゃ減っているものがあって、それはこのグラフでいうと、真ん中の青い色の部分です。これは労働人口と言われていて、要は働く世代。15歳から64歳の世代の人口は、この20年で500万人も減っています。これは結構驚くべき事実で、見かけ上の人口減ってないのですが、働き手は既にもう随分減っていて。さらにこの減り方は今後も加速していくという恐ろしい事実があります。

人口が減ると何が起こるかというと、まず経済に与える影響は、極めて大きいと言われています。一つの指標ですが、日本という国で生産されたものはGDPで表現されますが、GDPというのは簡単に式で表すと、生産する人口x1人がどれだけ生産するか。だから、“人口×生産性”で、1年間でどれだけの生産をしたかということが表されます。生産人口はもう既に減り始めていて、生産性がそのままだとGDP減ってしまうので、生産人口が減った分は本来生産性を上げないと駄目なんです。これを今働き方改革というので、一番取り組むべき課題として日本政府主導で取り組んでいます。

ところが、一つ大きな問題があります。今の働き方改革を続ければ、GDPは上がるでしょうか。これが本当に大きな課題です。日本政府ができるのは、規制を強めたり緩めたりということですが、規制をちょっといじっても、生産性はなかなか上がりません。例えば残業禁止しても、生産は上がりません。生産性をもっと上げる必要があります。

もう一つ今の現実を皆さんに知っていただきたいのですが、労働人口が減ったことによって今ものすごいことが起こっています。それは採用なんですね。新卒や中途採用で、人がもう全然採れない。周りの企業、みんな人不足、人不足と言ってますよね。どのぐらい人不足かというと、2015年が0.88倍でした。0.88倍というのは1人に対して仕事が一つないという状況です。これがたった2年で1.21倍。1.21倍と聞くと、「あ、そんなもんか」と思うかもしれませんが、個別の職種で見ていくと、建築は4倍から5倍。今はもう7倍、8倍と言われてます。あと2倍、3倍超えている仕事が結構たくさんある、このぐらい今人不足です。

人不足、人不足と言ってても、ますます生産上がらないですよね。生産量そのものが上がらないので、私は『クールワーカーズ』の中で、労働力の流動性を高める、こういう働き方を目指しませんかということを唱えています。具体的にどういうことかというと、1人の人が一つの企業にずっと自分のスキルを提供し続けるのではなくて、フリーランスでも副業でも何でもいいんですけれども、1人の人が自分のスキルを複数の企業に提供できる働き方にしましょうと。そうすると何が起こるかというと、今まで自分のスキルを雇用という形で1社にしか提供していなかったものが3社、4社になれば、生産量は3倍、4倍になるので、その分生産性は上がる、そういう社会を目指しましょう、と。

これは労働力のシェアリングエコノミーといって、今いろんなシェアリングエコノミーが流行ってますが、配車のUBER、宿泊のAirbnb、これらは車や住居のシェアリングエコノミーですが、労働力そのものもシェアリングエコノミーのように、皆さん友好的に活用しましょうと。私の会社はそういうプラットフォームをつくってるので、皆さんこういう世界観を一緒につくっていきましょうというのが『クールワーカーズ』で書いていた内容です。

雇用ではなくて契約関係で働くというふうに呼んでいますが、私がこの『クールワーカーズ』の中で言ってる内容と、小林正弥さんが『自分を最高値で売る方法』で書かれている内容の共通項はこれなんです。個人がスキルを生かして稼ぐという働き方にこれからの世の中なっていきますよ、という風にお互い同じような内容を言ってます。しかも今年の2018年8月、同じタイミングでこの本出して、こんな偶然なことはない。しかも全然縁がなかったわけではなくて、うちの会社の専務の大学時代の友人ということで、今日のトークセッションに至りました。

本当に100万稼げるの?

小林 : 専務の廣瀬さんとはロサンゼルスで2カ月ぐらい、アメリカの現地の外資系のコンサルタントの方が主催しているインターンシップで出会いましたが、将来お互いにビジネスで活躍していこうと、ロサンゼルスで熱く語って。そこから10年ぐらいずっと会ってなかったんですけど、こういうタイミングで再会できたのは、すごいうれしいなと思います。

北村 : 熱く語っていた2人が、また10年後こうやって同じ仕事のテーマでつながるって、すごいですよね。個人がスキルを生かして稼ぐという働き方において、私はどちらかというとみんながそういう仕組みに乗れるプラットフォームをつくっていますが、小林さんは、それを一人一人が実現するプログラムを提供されています。今日はその具体的な中身について、「本当に100万稼げるの?」というところを、聞き出したいと思います。まずは、ご自身の講座の受講生なんかも含めて、これまでの実績をいくつかご紹介いただいてもいいですか。

小林 : 今メインでやってる、自分を最高値で売るという趣旨の講座がありまして。“最高値で売る”ということを、単なる精神論とか啓蒙だけじゃなくて、具体的なビジネスモデルに落として、3カ月で少なくとも100万円以上は、収入を毎月得ていきましょうという実践会をやっています。これがもうちょっとで100人ぐらいになりますね。結構高額なんですが、そういう会を主催しています。

北村 : 100万円を稼いだ人を100人輩出したんですか。

小林 : 100万円稼いだ人は、まだ20人弱ぐらいなんですけど。まだ7月に始まったばっかりなので。

北村 : それでも20人もいらっしゃるんですか。すごいですね。

小林 : 個人で本当にお金を稼ぐということに関しては、いわゆるMBAとかよりもすごく実利的な会にはなってるかな、と思いますね。

月100万円稼ぐための3つのポイント

北村 : 例えば受講されてる100人だとか、既にもう実績を出された20人以上の方々というのは、具体的にはどういう内容のことをされている方々たちなんですか。

小林 : 具体的なビジネスモデルを先にお伝えする前に、皆さんご自身で押さえておく三つのポイントというのがあります。一つが、時間ではなく価値で報酬を受け取るという働き方。二つ目が、1社に勤めるのではなく、もしくは1社の下請けや専属契約を結ぶのではなく、複数の顧客と契約を結ぶという働き方。三つ目が、出社とか場所にとらわれない働き方。まとめますと、価値で報酬を受け取り、複数の顧客と契約し、場所にとらわれずに働くということが前提です。

僕も、僕という商品で、その高額の講座だけでも100人顧客がいます。多分フリーのコンサルタントの方で、100社も見てる人はあまりいないと思います。その100社から、それなりの高額のフィーをもらうというのは、普通の働き方をやっていたら難しい。多分普通の法人向けのコンサルタントさんで、企業で組織的にやっていたら何十社と持てるかもしれませんが、フリーでやってると10社ぐらい、大体それで年収も1500万から2000万ぐらいで、めちゃくちゃ忙しくて、北海道から沖縄まで行くか分かりませんが、馬車馬のごとく働くみたいな。でも、いろいろ気付いたら手元に全然現金は残らないというのが、一般的なフリーのコンサルタントの現状だと思いますが、僕は100社ぐらい持っています。

自己実現への教育型ビジネスの可能性

小林 : それをどのように可能にしているのかというと、僕は教育型ビジネスと言っておりまして、一番分かりやすいのは、ライザップさん。ライザップさんの社長が何かのインタビューでおっしゃっていましたが、ライザップの市場というのは、自己投資産業。「自己投資の市場をわれわれはつくっている」とおっしゃっていました。僕らがその100人の仲間でやっているのも、ある種自己投資だったり自己実現という、個人が最も高次な欲求というか、高いお金を払ってでも実現したいものを、人によっては語学というプログラムだったり、ダイエットのプログラムだったりで提供しています。

例えばですけど、体温を1度上昇させるというプログラムを40万で提供している方がいますが、この前これを作ったら、10人の申し込みがありました。それだけで400万じゃないですか。そういうのをオンラインで全国の人に提供するので、これから多分何十人と顧客を増やしていくと思います。一方で、もともと営業マンをされていて、営業の売れる仕組みというのを企業に300万で売っている人もいますし、いずれにしても自分自身が今まで培ってきた知識・経験を、パッケージ・体系化して販売しています。

「結果にコミット」は誰がするのか?

小林 : しかも、これがめちゃくちゃ重要なことですが、僕は「一切手足動かさないでください」と言ってます。普通のコンサルタントは、高額派遣料じゃないですか。そうじゃなくて、自分の手足を動かさずに、お客さんの手足を動かしてもらって、高額を払ってもらう。例えばライザップさんも、トレーナーさんがいくら結果にコミットしたところで、クライアントがポテトチップスポリポリ食べてたら駄目なわけです。でも、逆にトレーナーが隠れてポテトチップス食べたとしても、クライアントさんが食事制限を日々やって結果にコミットしてくれれば、本人の得たい自己実現は手に入るわけで、それに対して高額なフィーをいただく。そういうことをやってますね。

北村 : ありがとうございます。実は私、3年ぐらい前、ライザップ行ってたんですよ。ライザップに行く前までは、10年ぐらい太ってたんですよ。太ってたので、何か運動しないと駄目だなと思って、フィットネスクラブに毎月1万円払って入会しました。でも、結局ほぼ行ってないんですよ。よくよく考えたら、1年間で12万円、10年間で120万円投資してるんですね。でも、そのフィットネスジムは私に何もコミットしてくれませんでした。

ライザップとそのフィットネスジムの違いは、ライザップは30万か40万したんですが、僕を2カ月で必ず痩せさせてくれますと。ちょっと勘違いしている方がいらっしゃるかもしれませんが、ライザップはムキムキになるんじゃなくて、あれは痩せるプログラムなんですよ。あれはほとんど運動しないんです。週2回、1回40分しか運動しません。残りの時間何をやってるかというと、食事制限の指導をされます。だから、こういうことですよね。ライザップのように痩せるということにコミットして、自分たちはその運動を一緒にするとか、そういうところで時間を割くのではなくて、痩せるという方法をクライアントにコミットして売る。そういうタイプのビジネスを目指す、そういうことですよね。

小林 : 僕は、「ノウハウを売りましょう」という講座をやる前に、人材育成の内製化のコンサルティングをやっていました。もともと研修会社に新卒で勤めたんですが、それと真逆のことをやりました。

外部の研修に1日通っても、他の29日何もやらなかったら、業績伸びませんよね。だったら社内で、例えば営業研修を外で1日受けに行くのではなくて、営業が良くなる人材育成の内製の仕組みを社内に入れましょう、ということをやりました。結局、いくら講師の前でいいことを勉強しても、今日も同じなんですけど、ここの会場の中に、皆さんの成果というのはほぼ何一つなくて、この後帰って皆さんの生産性がどれだけ上がるかというのは、その後どういう行動を取ったかじゃないですか。ダイエットも全く同じで、1時間筋トレやったところで、たいした変化というのは生み出せません。僕はベースが人材育成の内製化で、現場に立脚したプログラムをつくっていたので、それを講座に応用して高くても結果が出る、すなわち高額のフィーをいただくモデルを作れたんだと思います。

北村 : ということは、例えば人材育成だったら「教える」とか、痩せるだったら「筋トレする」とか、それぞれスキルとしては世の中に普遍的に当たり前のものだけれども、その方法を教えるということに1個昇華させる感じですよね。

小林 : 今までの知識・情報化社会の逆説というのは、知識・情報が価値を失う時代。要は無料でアクセスできる時代になった中で、いよいよ一段顧客が求めるものが上がって、「結果を出してくれたら高いお金を払うよ」という時代になってきた。

北村 : 今、世の中にスキルを時間で売るビジネスをしてる人がたくさんいると思いますが、そういう人でもコミットするポイントを変えて、そのビジネスの形を小林正弥さんがおっしゃるとおりにすれば、たくさんの人がそういうチャンスがあるということですよね。

安売り合戦に突入せず、高値で買っていただくには?

小林 : 僕のクライアントさんで一番分かりやすい例を紹介します。1時間2000円のフリーの英語の先生が、よくカフェなどで個別指導やってますよね。そういうのをマッチングさせるスキルシェアのプラットフォームというのもいろいろ出てきてますけど、1時間2000円で売ったら、もう超安売り合戦に突入してしまうわけです。

その人がどうやって最高値になっていくかというと、パッケージにするわけです。全8回で、旅行で一切困らない英語を2カ月で習得できます、というレッスンをつくります。でも一番重要なのは、この8回の間で、毎日英語にコミットしてもらうプログラムの設計にすることです。そうすれば、例えば入り口を2000円で体験できるようにしても、「ここから2カ月でこういう自己実現をコミットするので30万払ってください」と、いう売り方が出来るわけです。結果的に、高値になっていくんですよね。

北村 : そういう売り方を実現するプログラムを、小林さんはいろんな方に伝えられています。今おっしゃったような、例えば私は英語を教えてるんだけど、もうこの2000円から脱却したい、100万稼ぎたいという人に対しては、どのぐらいの期間があれば、その人はそういうレベルになれるんですか。

小林 : 僕の場合は3カ月で100万円というのを一つのゴールにしています。ただ、そこまでにはまず高値でも売れるコンセプト作り、それから三つのステップしかありません。結論から言うと、3カ月以内に100万円ぐらいは、普通にやったらいけます。いわゆるライザップさんにしても、広い意味での教育ビジネスだと思います。教育ビジネスというのは、「うまく行くかも」でお金を一旦は払ってくれるんですね。僕はよく脳内成功と言ってますが、その人の頭の中で、カスタマーサクセスが描けていれば、それに対して30万というのは払っていただけます。

僕はよく「勘違いしないでくださいね」とみんなにも言ってますが、僕も自分の自戒を込めて言ってるのは、ある種前借りという感じに思っておいたほうが健全なんですよね。前借りでお金をいただいた上で、時間差で約束した結果が出るという。なので、早い人だと1カ月、普通にやっても3カ月ぐらいで100万円というのは十分達成できます。単価が個人向けでも30万以上つくので、3~4人契約したら100万じゃないですか。

法人向けに、高値で買っていただくためには?

北村 : 今個人向けだったら30万、40万というお話でしたが、ちなみに法人向けだったら、単価はどのぐらいになるんですか。

小林 : まず誰を顧客にするかがすごく大事です。皆さんが投資なのかコストなのか、どっちに振り分けられるか。例えばロゴ1個500円です。これはコストに分類されます。危険なのは、1社に働くというのも、人件費というコスト削減の、コストというカテゴリーに入れられてしまうとまずいんですけど、基本的に社長や個人で何かやってる人というのは、投資的なマインドセットがあるので、企業に対してであれば、社長は費用対効果を結局求める。「これを払ったら、どれだけうちの利益伸びるのかな」ということに対して、高い安いがあります。

あとは何と比較するかというと、大体人件費と比較します。社員1人雇っても、いろいろ社保とか入れたら月30万、年間360万ぐらいは払うわけです。なので、採用活動をやってる会社というのは、少なくとも1人募集をかけていれば360万の枠はあるわけなので、それ分ぐらいの金額で契約するというのが一般的です。なので、月20万か30万。年間だったら360万。営業部長で入れていくのであれば、月50万の年間600万というのが基本ですね。

北村 : 法人はそのぐらいの金額で契約してくれるんですね。

小林 : 大体僕の塾生さんたちは、そういう契約を結んでますね。僕も1カ月で月210万プラス消費税が12カ月先まで確定したのは、それをやったということですね。

社長の自己実現に終わりはない!

北村 : ちなみに、今のお話だと、コミットしてしまうと契約は終わってしまいます。その先はどうなりますか。

小林 : まずコミットは、自分もコミットしますが、相手にコミットしてもらうことが重要です。なので、契約のときが一番重要。例えば法人だったら対社長や責任者に、その約束した成果を、いかに相手にコミットしてもらってサインするかというのが、ものすごく重要です。

社長の自己実現には、終わりがないじゃないですか。なので、ワンクール目である程度達成できたら、次、いよいよここからですねと。こういうテクニック的な話を言います。契約をするときに、僕は必ず「社長、いよいよここからですね」と言います。社長はもう契約終了の気持ちで来たのに、会議室に入ってきたときに「いよいよここからなんだ」と思うわけです。「いよいよ本当にどうなりたいんですか」と聞いて、そこに向けてもう1クール契約していくというのをずっとやっています。

北村 : コミットしてもらうポイントが、ドンドン上がってきて、長期的に継続するような、そういう仕組みになってるということですね。ライザップ的に言うと、10キロ痩せたい人に対して、「次はムキムキになりませんか」、そんな感じですね。

小林 : 僕もライザップ行ったんですけど、言われましたよ。「小林さん、10キロ痩せました。いよいよここからですね」。そして、コンテストのチラシ見せられました(笑)

北村 : 僕も同じです。「次はバンプアッププログラムになりますね」「筋肉を増やしましょう」みたいな。

小林 : なので、僕がよく言うのが、携帯も2~3年で機種変更されると思いますが、いかに自分という商品に、賞味期限切れを起こさないかが、契約更新の意味でもすごい大事だと思っています。そのキモというのは、僕はよくカスタマーサクセスという言葉を使いますが、相手がどうなっていきたいのか、そのサクセスに終わりはないと思うんですよね。特に投資意欲の高い人には終わりはないので、そこをずっと描いていく。

誰を顧客にするかで値段が変わる

北村 : さっき時給2000円の英会話講師の例を出していただきましたが、ここにいる皆さんがもうちょっとイメージが湧くように、他にもこういう職業やスキルの例、いくつか紹介いただいてもいいですか。

小林 : いろんなアプローチがあります。例えばボイストレーナーさんで、個人向けにカラオケが上達するボイトレのレッスンを、1時間3000円や5000円でやっている先生がいました。この人はすぐ100万円超えたんですけど、どうやって3カ月で100万円超えたかというと、まず対象を変えました。基本的に経営者に対象を変えれば、なんでも高くなりますが、“経営者にとってのリーダーシップや影響力、人を動かす力を身に付ける声のトレーニング”というふうに変えました。「社長、話す内容も大事ですけども、声の質で全然影響力違いますよ」という形で、大体ライザップみたいな感じでつくるんですけど、2カ月で本当に影響力のある声に変えるというプログラムで30万です。

あと、アスリートのセカンドキャリアって大変じゃないですか。ボクシングのチャンピオンになった人ですら例外ではないらしいですが、そこは闘争心プログラムというものをやってました。経営者が常に経営やリスク、経営課題に直面したときに、腰が引けたら駄目ですよねと。その闘争心というものを、例えば稲盛和夫先生も“闘争心”と本の中でおっしゃってますけども、社長の闘争心、社員の闘争心に火を付けるというのを、ボクシングで身に付けましょうということで、これもまたすごく高額でやっています。社長が大体まず入って、「これはいい」となって、社員の人にも広がるみたいな。

北村 : 普通ボクシングのトレーニングジムだと、月謝1万円。1人のお客さんから普通は1万円とか数千円しか取れないものを、経営者という対象に絞る。要はボクシングという技を教えるのではなくて、「あなたの闘争心を燃やします」というところにコミットメントしてもらって、「そのためには30万円必要でございます」となると、経営者というのは「そうか。俺、ボクシングやりたいんじゃないんだ。闘争が必要だ」「この30万で闘争心を買えば、会社の業績超上がるな」「30万円の投資だな」「むしろ安いな」。さらに、「俺が30万で1億売り上げ上がるんだったら、従業員のみんなに勧めたら、さらに2億になるな」とか、そういう算段が働いていく。そういう構図になってるんですね。

大きな川から水を引いてくる発想

小林 : これは僕のパッと出のアイデアではなく、どういうふうに世の中を見てるのかというと、お金の流れで見てるんですね。簡単なのは、大きな川から水を引いてくる発想。これは個人とかスモールビジネスで1億つくるときに、一番成功確率が高いやり方なんですが、どこにお客さんとお金が流れているのか、ということを見ていきます。

そこの流れを捉えて、その周辺でビジネスしちゃうっていうのもありですし、例えばホームページ製作で、最初にお客さんをどうやって捕まえたらいいかというと、高額の起業塾に行ったら、大体ホームページつくりますよね。起業塾にそうやって100万払う人たちがいるので、そこに川の流れがあるとしたら、その周辺にホームページがあるので、まずそういうふうに、ひゅって水を引いていくというのもあります。経営塾にお金が流れてるなら、スポーツと経営というところで、何かスポーツを通じて業績が伸びるみたいな、自分のほうに水を引いてくれば、これで年間3000万や1億というのは、単価が高ければ顧客の数がそんなに要らないので、例えば単価が30万で全部新規と考えても、3000万というのは年間100人だけお客さんがいればいいわけですよね。というふうに考えたら、そんなに難しくない。

北村 : だから、めちゃくちゃ高いものを売ってるわけじゃないですと。1個1000万とか、ダイヤとか車とか売ってるわけじゃないので、1人当たりが30万や40万出せる、そういうスモールビジネス。そういうのを出せそうな財布を持ってる人たちの流れから、どうやったら自分のほうに引き寄せられるか。そういうイメージをしていくということですか。

人は自分の価値には気づきにくい

小林 : そうですね。あとは、僕の塾で1カ月目で800万ぐらい売り上げた女性経営者がいます。この人は事務代行をずっとやってて、競合も多いし、あまり利益出ないなという感じでした。Googleを活用した生産性アップの仕組みを売るプログラムを、その女性経営者はつくったんですけど、値段どうしようかというときに、いろいろ競合の価格を調べたら、1000万ぐらいしたので、そこでちょっと値段下げて、「他社で同じサービス入れるとこれだけするんですけど、うちだったら」ということで。ノウハウに原価はないので、その方は、「これ、値段つかないんじゃないかな」と思ってたんですけど、ちゃんと1顧客当たり1000万のお金が流れているところを見つけたので、1カ月目からハイプライスで提案して、800万の受注を取ったというのもありますね。

北村 : それ1社800万ですか。

小林 : 500万と300万で、2社で800万です。

北村 : その500万、300万で売ったものは、もともと他社が1000万で売ってたものなんですよね。しかも、その人自身は、そこに500万とか300万の価値があると気付いてなかった。

小林 : そうなんです。特にものを売ってる人は、原価という発想なので、無形の資本というか、知識とかノウハウに値段がつくという発想がないんですね。

北村 : さっきの英会話講師とかボイストレーナーもそうですけど、皆さん気付いてないけど、実はあなたのそのスキルを生かせれば、こうやって人に伝えることによって、さらに価値が高まりますよ、ということが結構あるってことですよね。皆さん気付かないから、そのままなわけじゃないですか。その人たちが気付くためには、どうすればいいんですか。

小林 : 気付くためには、是非この本を読んでいただきたいですね(笑)

北村 : そうですよ、スキルある人は、これ読んだほうがいいですよ。これ読んで「あ、自分に可能性あるな」と思ったら、この本を読んで小林さんに連絡するということですよね。「私、可能性ありますか」って(笑)

小林 : なんらかの人生経験を積まれて、特に苦労を乗り越えた経験をされている方は、大体高いお金に換わります。自分の人生の問題解決してるわけですから、問題を持ってる人に問題解決のアプローチを持っていったら、ものすごい喜ばれるわけです。自分が得意なことと、ちゃんと市場のニーズがあること、あと競合からちょっとずらす、というのがポイント。自分にベクトルが向き過ぎると、煮ても焼いても食えない、変なサービス。きれいじゃないのに「私と写真撮りませんか」と言われても、「いやいや」みたいな感じですしね。ちゃんと市場のニーズもあって、自分の優位性が発揮できるということが大事です。

一番分かりやすいのがコンサルタントというお仕事ですけど、コンサルタントのお仕事ってやっぱり生産性高いじゃないですか。生産性の高い会社に勤めていた人というのは、それを複数の顧客に売ることは、かなり容易にできます。経営者の方も自分で業績を伸ばしたり、個人のフリーランスの方でも、収入がアップしたらそれを売ることはできますが、生産性がハッキリ言って高くない、僕が以前やってたような皿洗いのバイトなどをやってたら、その皿を洗うスキルは高くは売れませんので。

それでも、例えば日雇いのバイトでも、その日雇いの仕事をやりまくって、フランチャイズでやって、これから多店舗展開したい、1店舗のラーメン屋に日雇いのバイトでも業績が伸びる仕組みというのを持っていけば、そこの知識の格差で高くは売れます。

売るものがない人がするべきこと

小林 : もし、もともと売るものがなかったら、それはもう身に付けるしかないので、一番いいのはタダ働きだと思います。

北村 : タダ働きって、働いてもお金もらわないということですか。

小林 : お金もらわないです。これが一番、投資効果がいいと思いますね。僕も今でもやってますけど。

北村 : え?ちなみに、1億円稼ぐ小林正弥さんでもタダ働きする理由を教えてもらっていいですか。

小林 : 要は、何をお金に換えているのかということさえ分かっていれば、タダ働きが一番効率がいいということが分かると思うんですよね。僕の場合は、早くに会社を出ちゃったので、会社で育ててもらう機会を失ってしまったので、タダ働きせざるを得なかったというのもあります。それはともかく、自分の時間をお金に換えているという発想だったら、タダ働きの発想には行き着かないと思うんですよ。「1時間働いたんだから、少なくとも2000円ください」みたいな発想になると思いますが、自分のつかみ取った知恵、が将来的にお金に換わるということが分かっいてれば、タダ働きというのは、その人からお金もらわなくても、将来お金に換わる知恵の仕入れだと思って、僕はタダ働きしてます。それは知識的な資源だったり、人脈だったり。

“返報性の法則”というものが、チャルディーニ博士の『影響力の武器』という本にありますけども、やっぱり「タダでこれだけやってくれた」ということをキーマンに対してやりまくっていると、「小林君に然るべきタイミングで何か返さなきゃ」となります。

成功している人ほど、そういう貸し借りみたいなものにすごくシビアだと思いますし、そこで人的な資源も仕入れられます。正直生産性低い仕事しかしてこなかったのに高いお金なんて払ってもらえないし、生産性の高い仕事にありつけるはずもないんですよ。どう考えても、皿洗いのバイトをやってる人がいきなり戦略コンサルタントになれるわけないじゃないですか。と考えると、転職も不可能だと思うんですよね。でも「タダで身の回りのサポートをさせてください」だったら、断られにくいと思うんです。相手にとって、何のリスクもないので。というので、将来お金に換えられる知恵も人脈も、一番手に入れやすいのがタダ働きだと思いますね。

北村 : ちょっとこの例えが合ってるか分からないですけど、例えば寿司を握る技術を身に付けたいとある日思い立ちました。これから月100万稼ぐ人になりたいと思って、そのためには寿司のスキルが必要だとなったときに、寿司屋に行って「大将、俺をタダで雇ってくれ」と言って、そのスキルの技術をタダ働きで身に付けるんですね。

小林 : そうです。

北村 : 身に付けるとともに大将からも感謝され、身に付ける過程でいろんな仕入れ業者と知り合いになり、技術と人脈と大将からの感謝を手に入れて、独立しやすくなる。そういう例えで合ってますか?

小林 : そうです。「ここで自分が旗を立てたい」と思ったら、競合じゃなくて、どうやったら味方つけられるかを考えます。絶対この人からはお金はもらわないと決めて、その人から教えてもらったので、ちょっと成果を得たとするじゃないですか。それはめちゃくちゃ報告するんですね。「○○さんの教えのおかげで、これだけ結果出ました」となると、「あ、ちゃんとこいつ仕事やってんだ」ということで、「じゃあ、今度Aさん紹介してやるよ」みたいな形で仕事がバーッと来る。

北村 : これが時給900円の募集を見て行っちゃうと、こき使われて終わる。なので、いっそのことタダ働きのほうがスキルも身に付くし、感謝もされるし、いろんなものがおまけで付いてきますと。確かにそうですよね。そういえば、とある経営者と、先週話したんですよ。その人はお若いんですけど、結構大物で、上場も経験したし、その後1社も成功させているという人で。「でも今、全然別の会社に出向してるんです」「なんで出向してるんですか」「勉強です」と言っていましたね。自分が次行きたい業界のことを、出向で行けば、その仕事を通じて生で知識が身に付けられるから、これ以上の勉強はないとおっしゃった。全く同じですよね。タダ働きには、そのぐらい価値があるということですね。

小林 : あと、これは実感値もあるんですけど、時給いくらというお金をもらっちゃうと、それが制限になる。そもそも時給化された仕事は、ほぼ標準化されている。時間いくらという価値に対してお金を払ってないので、とりあえずコンビニのバイトだったら、時給900円払っておけばそれ以上の生産性が生まれる仕組みになっているので、時給化された仕事にたいした価値はないんですよ。お金をもらっちゃうと、時給の仕組みの中の仕事しかやらないので、他に替えが効く人材にしかなり得ないんですよね。

でも、お金をもらわなくてもやりたいことじゃないと、そもそも続かないですし、そうすると自分の眠っていた才能とか、強みとか、情熱が引き出されます。タダでも相手に与えたいものは何なのかということを、タダで与えまくってたら、自分の才能や強みが開花されたということもありますよね。

北村 : ということは、今ここに「私って、そういうスキル何もないかも」と思ってる人でも、タダで働けば、そういうチャンスはいくらでもありますよと、そういうことですね。小林正弥さんでさえ、今タダ働きしてるぐらいですから。

小林 : いや、僕もそれをすごい活躍してる人に教えてもらいました。やっぱり知恵って、年齢的にも上の人から、脈々と受け継がれてると思うんですよね。そういう目に見えないものほど受け継がれていたりするので。僕がタダ働きしている先生も、もっとその上の人からというふうになってますし、「次このポジションはお前にバトン渡すよ」みたいな、そういうのは、タダでその人に与えてるからこそ、信頼残高が積み上がっていく。

リアルでお客さんを見つける方法

北村 : 信頼残高、そのキーワード、あとでちょっとディスカッションしましょう。今までの話は、どちらかというとスキルをどう付加価値に変えていくかという話にフォーカスしていましたが、一つ疑問があります。ものすごくいいコンセプトでできあがったとしても、お客さんがいて初めて売れるわけじゃないですか。そのお客さんを見つけるには、どういう方法でやるんですか。

小林 : リアルとウェブと両方ありますが、最初はやっぱりリアルがいいと思います。それこそ僕なんかも本当人力で、どこにお金の流れがあるのかなというのを見て、そこから何かゲットしようみたいなエネルギーだと、相手も気付くので。「こいつ、何かここから取ろうとしてるな」みたいな。

そうではなくて、そこに与えようというGiveの精神で行くわけです。例えばホームページの製作を取りたいなら、「タダでつくってあげるよ」というところから。そういう知的生産のいいところは、お金の場合、Aさんに1万円あげたら、1万円自分の手元からなくなりますけど、知的生産の活動は、Aさんに100あげてもなくならないじゃないですか。Aさんにタダで100あげてもなくならないし、Bさん、Cさんにあげてもなくならないので、リアルでタダ働きするのが一番いいです。

そういえばBasis Pointさん、さっき僕も登録しました。こういうプラットフォームが今まではなかったので、僕はもう自力で行くしかなかったんですが、このBasis Pointさんのアプリがありまして、ビジネスのマッチングアプリみたいな感じなんですかね。

北村 : 例えばBasis Pointの会員さん、今2万人ぐらいいるんですよ。でも、店舗に行って2万人に会えるわけじゃない。コワーキングスペースのいいところは、誰かと一緒に仕事をするとか、そういう目的を持ってくるお客さんがたくさんいらっしゃるんですね。でも、行っても2万人と会えない。行っても、自分の知ってる人たちばかりとは限らないので、オンラインでもちゃんとつながれるというのを、このアプリで今実現しています。

例えば、お客さんからデザインの仕事頼まれて、誰かにお願いしたいなというときには、デザイナーをこのアプリで検索できたり。自分がプロジェクト立ち上げたいな、人を集めたいなというときは、そのプロジェクトで人を募集したり。そういうのができる機能で、皆さんよかったらぜひ登録してみてください。

小林 : 僕は別に宣伝担当でも何でもないんですけど、僕がもし全くゼロからやるとしたら、ここにすぐ登録します。これも月360円から登録できるわけですから、このBasis Pointさんのコミュニティーに、いかに自分が持ってるものを全部与えられるかということだけを考えます。それをこのコミュニティーに一番与えた人が一番報酬を得ると思うので、それだけ徹底的に、もうスタッフの人にも、そこに参加してる人にも、会員さんにも、どうやったらこの人たちの役に立てるのか、価値を提供できるのかということだけを、もう圧倒的にやりますね。

北村 : そこでもGiveなわけですね。

ウェブでお客さんを見つける方法

北村 : 今のお話がリアルなほうですね。ウェブの方は?

小林 : 今、YouTuberという新しい仕事ができてますよね。知的な価値というのは、あげても減らないどころか増えていきますし、例えば知的な何かという皆さんの専門性を、YouTubeやブログに、とにかく無料で情報発信をしていく。無料でウェブ上で、ある種全世界的な人に対して、タダ働きをしていく。

みんなゲットするという発想だから、しょぼいコンテンツしか上がってないわけですけども、僕自身どういうふうにやってるのかというと、普通の人が何万円も課金するような教材レベルの内容を、無料で全部動画やメールで公開してます。これ1回つくったら、要は僕の分身ですけど、ウェブ上に営業マンだったり、マーケティングの分身たちがいっぱいいて、24時間365日文句も言わずに働き続けてくれてるんですね。この本もそうですよね。この本は、原稿当たりいくらではお金はもらえないですけど、印税という形で、1回この本を書いたら、この僕の分身が全国の書店に並び、Amazonに並び、半永久的に価値提供してくれるわけです。ウェブで、自分の専門性を使って人の役に立てるものを、あらゆる人がやらないレベルでやれば、そこからお客さんは集まってきますね。実際僕も、毎月大体50人ぐらい、僕の説明会に全国からいらっしゃるんですけど、ほぼ誰とも会ったことないです。そういう人たちが、ウェブだったら年間1万人ぐらい、リアルのセミナーでも、300~400人いますが、それはなぜかというとウェブで僕が無料でいっぱい与えているから、そういう全く見知らぬ人が集まってくるんです。

北村 : リアルのほうが確率も高かったりするのでリアルも大事なんだけど、ウェブを使うことによって、より多くの人にアプローチして、さらに自分が寝ている間もアプローチし続けてくれてますと。これでリアルというものをちゃんとうまく併用して、それで集客につなげるというか、そういう仕組みでされている。

小林 :先月体調が悪くて、立ち眩みしたんですね。もし今死んだらどうなんだろうと思ったんですけど、でも自分の大事な要素は本にしたし、オンライン講座になってるし、それを教えられる塾生ももうできてるから、一旦僕の動きが完全に止まっても、そういった仕組みが回る。これはもしかしたら、例えば松下幸之助さんや孫正義さんも、結構若い頃に大病になられて、もしかしたら、自分がもう動けないという制約条件の中で、どう社会貢献するかを、もしかしたら病院の中で考えたからこそ、あれだけスケールしたのかもと思いましたね。僕はお話聞いたことないから分からないですけど、いずれにしても自分が一切動かなくても、自分の時間と価値を生む仕組みというのは完全に分離しています。

北村 : テクノロジーが進化して、インターネットの技術もそうだし、動画で配信するとか、ここ数年でようやく手軽にできるようになってきた感じなので。そうやって誰にでもチャンスがある世の中になってきたということですかね。

小林 : 誰にでもチャンスがあると同時に、今、教育業界では中間が消えるというのもあります。例えば、マーケティングの超いいコンテンツがあったら、もうコトラーの最高のやつが全世界的な言語で翻訳されたら、マーケティングの教授誰も要らないという、ある意味そういうシビアな時代ではあります。だから、専門性を高めて全世界に売ることもできるし、専門性がなければ1円にもならないという厳しい社会でもあると思いますね。

北村 : 皆さんタダ働きでもいいから、専門性を高めましょうと。

小林 : そう思います。

お金の残高と信頼残高の違い

北村 : さっきキーワードで出ましたが、実は私と小林正弥さんの著書の中で、なんのすり合わせもしてないのに、共通する価値観がありました。二つともキーワード出ましたが、信頼残高という単語を2人とも使っています。信頼残高って、一般用語じゃないですよね。でも2人とも信頼残高というキーワードを、たまたま使っていました。あと、“タダ働きするとよりいいことがある”Giveする人が成功する”、私もそういう考えを持っています。

私は会社の経営の理念というか一番大切な言葉が、“先義後利”だと思います。先に義があって、あとに利益がある。昔の中国の言葉らしいですが。これは人によっては誤解されるんですけど、先に義があってあとから利益があるというと、「言うこと聞いてね、あとからアメあげるから」とそういうことではなくて、先に自分が義を果たしたら、利益はあとから勝手についてきますよ、という意味です。なので、やっぱり先にGiveすると、すればするほど結果的にいいことがありますよ、ということをとても大事にしています。

ちょっとディスカッションしたいことがあるんですが、「最近の若者は」という話をよく聞きます。「最近の若者は、お金でものを選ばない」とか。情報やいろんなものが大量にあふれている世の中になってきて、物欲もだんだんとなくなっていくときに、人付き合いはどういうふうに変わっていくかというと、これはもう信頼残高でしかない。要は、今まではちょっと悪いことをしていても分からなかったというのも結構あったりしましたが、最近はSNSをみんなが使うようになって、ちょっと何かしたら分かっちゃうわけです。分かっちゃうと、みんな悪いことできなくなっちゃうんですよ。悪いことできない工夫、みんな個人もそうしようと思うのは、なぜかというと、それは人を裏切って、その人から信頼を失いたくない。だから信頼を積み重ねていこうと。みんなにはちゃんといいことをしていかないといけないというふうに、信頼の残高を積み重ねていく。

残高って、減るのは一瞬なんですよね。何かめちゃくちゃ悪いことをして、SNSでバーッと広まると、もうその人の信頼、これまで何十年も積み重ねてきたものが、一気にゼロになります。お金が至上主義の時代はそうではなくて、お金の残高はバーッとたまるけど、悪いことでも別にお金の残高減らないし、100億円持ってる人が1億円使ったら、1億円しか減らない、99億円は手元に残る。今まではそういうお金主義の時代でしたが、だんだんとお金よりも、価値にドンドンと信頼が置かれてきているということを、私もビジネスを通じてこの数年めちゃくちゃ痛感していたので、そういうことを本に書いたんですけど、小林正弥さんはどうですか。

小林 : 今までは確かに、お金を持ってる人が次のお金を生み出しやすかったと思います。工場もお金がある人が場所買って、人を雇って、生産して、売って。でも今は、お金があったら次のお金を生み出せるかというと、お金よりも無形の人とのつながりだったりとか、人脈だったり、無形の専門性だったり、こういったもののほうが価値をつくりやすいので、そういう意味でも目に見えないもののほうが重要になってきたし、それがフラットにつながってきたというのがありますよね。Facebookも、Facebookのアカウントがないと、サービスにも登録できなかったり、というのはありますよね。

やっぱりGiveする人がうまくいく

北村 : Giveするというのは、いつぐらいから意識されてましたか。

小林 : 僕がお金に困ってたとき、自分のことしか考えてなかったんですね。本当に自分のことしか考えてなかったので、顧客不在の状態になっていました。なんとか働かせてくれる日雇いのバイトをやらせてもらって、すごい成功している社長に、その方奈良の方なんですけど、「お勉強はできたかもしれないけど、お前、商売偏差値は30以下だな」と言われました。その人は高卒なんですよね。でも、商売はたたき上げでやってきた人で、西日本で長者番付にも載るような成功した父に育てられた人でした。息子であるその方も大成功していますが、今ミャンマーでマイクロの投資の、お金がない人にお金を貸すというファンドのビジネスをやっています。その人にガツンと言われて、そこからGiveに対してすごく自分の意識が変わりました。そういうGiveしている人に直接会ったことで、「あ、やっぱりGiveする人がうまくいくんだ」ということが、いろんな意味で入ってきたんだと思います。

北村 : Giveする人って、結構みんなポジティブじゃないですか。私もいろんな人と会って、Giveする人にもたくさん会ってきました。私、大企業で勤めていた経験が長いんですけど、例えば部長と打ち合わせとか、何かの打ち合わせとなると、めちゃくちゃ気が重たいんですよ。なぜかというと、もう99パーセントネガティブなことしか言われないから。「これどうなってんだ」とか「お前のこのアイデアは駄目だ」とか。

でも、Giveする人たちは、みんなポジティブな考え方を持っていて、話をすること自体も楽しい。一見良さそうじゃない出来事とかでも、すぐ発想の転換でポジティブにしてくれる。というふうに、Giveする人とやってたら、自分も物質面だけじゃなくて精神的にもいろいろ与えてもらってる気になるので、この人にちゃんと感謝してお返ししないといけないなとか、そういう気持ちになりますよね。世の中全員がGiveしてたら、世の中むちゃくちゃ良くなりそうだなみたいな、そういう感覚ありますよね。

小林 : 僕はコップの水に例えて教わりましたが、自分で自分のコップを満タンにできて、あふれたものを「自分はいいから、人に分ける」ということを教えてもらいました。このコップの水の入れ方というのが、僕の今年のターニングポイントでした。今年2月にインドに行ってきて、そこはいろんなウォール街のヘッジファンドのマネージャーや何千億という資産を持っている人も来るような、メディテーションの施設だったんですが、瞑想を10日ぐらいやったんですね。そこから自分の中で、自分を満たすことが本当にできるようになりました。それまでは「精神的に自分は足りない」「馬鹿だ」「駄目だ」みたいな乾いた状態で、「とにかく人から奪わないといけない」みたいな感じだったんです。Takeしないと生きていけないみたいな感じだったんですけど、自分で自分の精神的充足ができるようになってから、本当にGiveということにフォーカスできるようになりました。

北村 : そういういい体験があったんですね。

小林 : そういう意味では最近、例えばGoogleがサーチ・インサイド・ユアセルフというメディテーションを社内で取り入れたり、スティーブ・ジョブズも禅やったり、結構いろいろ周りの人も聞いていると、瞑想をやってたりするんですよね。現実的に「Giveしろ」と言われても、なかなかできなかったりすると思うんです。

北村 : 余裕のないところからは、難しいですよね。

小林 : そういうのはあるかもしれないですね。

良好な人間関係が豊かな人生を創る

北村 : 最近世の中いろんなものがあって、だんだん豊かさの基準が乱れてきているように感じます。本当は幸せなはずなんだけど、人をねたんでしまったり、そういうのがあると、やっぱり心をどこに置くかって大事ですよね。

Basis Pointのホームページにも書いてますが、自分の死が近づいてきたときに、みんな自分の人生が豊かだったかどうか、多分振り返ると思うんですよ。でも、ある人が言った話によると、豊かな人生は、お金ではなくて良好な人間関係らしいです。世の中インターネットが発達して、Facebookでつながったら、さも人間関係を築いているように見えるけど、それはあくまでデジタル上の付き合いなので、実際の人間関係じゃないんですよね。豊かな人間関係を構築するためには、人と直接会わないといけない。なので、いくらこういうITの技術が進んでも、リアルなものはなくなりません。

例えば小林正弥さんがおっしゃってることは、多分この本を読んだりインターネットを見れば分かると思うんですよ。私が普段言ってることも、この書籍を見たり、私のブログを見れば分かると思うんですけど、こうやって皆さん今日わざわざ話を聞きにいらっしゃるのは、やっぱり何か熱量だとか、あとはこの本を書いた人の声を直接聞いてみたいとか、そういうところから人間関係が始まるわけですよね。今日は皆さんにとっていい機会かなと思いました。小林正弥さんのほうから、皆さんに何か最後に言っておきたいことありますか。

小林 : 僕は自分が別に成功してるとは思いませんが、最安値のときからしたらすごくいい人生になったなと思います。あらゆるチャンスは、僕も人からやってきてますし、財務諸表で見ても売り上げになるお金を払ってくれるのは、唯一顧客だけですし。信頼残高は、財務諸表には載らないですけれども、人間関係の中でその人の中に積み上がっていくもので、それは「タダで働かせてください」というのも含めてですが、人に何かお願いしたり、何か人に動いてもらうことなんですよね。例えば今日ここに皆さんいらっしゃるということも、信頼残高を消費してると思うんですよね。今までBasis Pointさんが、いや、北村さんが積み上げてきた信頼残高があるから、ここに来ていただいている。僕の関係で来ている方は、僕との関係の中に信頼残高があったから来ているというふうに、シビアに見てまして。「信頼残高は何かお願いしたら消費する」と僕は思っています。貸し借りという世知辛さじゃないんですが、常に僕に会ったときに、いつももらってるなという感覚になってもらえるようにしたいなと思っています。「いつも小林さんに会うと、いい話を聞かせてもらったな」というふうに、ですね。「小林さんにセールスされて時間を無駄にした」と思われたら、信頼残高がマイナスになってしまうので、そういうことはすごく意識するようにはしてますね。

北村 : 信頼残高とGiveは、つながってる概念なんですね。

失敗しても、チャレンジの機会は平等

小林 : 僕なんてキャリアから言ったら、完全に道外しましたが、そういう人間でもなんとかカムバックできたので。意外と失敗しても、チャレンジの機会というのは結構平等に与えられているところはあるので、皆さんが今どういう状況かは分からないですが、うまく行ってる人はさらにうまく行くし、今ちょっとつらい状況の方も、信頼残高をドンドン上げていくという、信頼残高をためていく活動自体が自分を豊かにもするし、最終的な最後の報酬としても、お金として返ってくるということは普遍的な原理原則かなというのは、自戒を込めてすごく思いますね。

北村 : というのが、自分を最高値で売るコツですね。

小林 : マーケティング的にこういうタイトルにしたんですが、本当は最高値で買ってもらう方法というか、「お値段以上と思ってもらう方法」のほうが適切なんですけどね。

北村 : 分かりやすいですね。小林正弥さん、どうもありがとうございました。

小林 : ありがとうございました。

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